国産大豆の課題解決策を推進、「麦・大豆プロジェクト」で単収向上図る/農林水産省

〈スマホなどで低単収要因を分析、需要をさらに高める施策も検討〉
国産大豆は、平成30年産から2年連続で不作となった。大豆業界では天候被害による収量減少で取引価格が高騰した平成25年産の記憶が新しい中で、気象に大きく左右されがちな収量、それに伴う価格の変動という、国産大豆が抱える課題を再び認識せざるを得ない状況となった。

農水省穀物課では、国産大豆の課題解消策を検討するため、これまでもさまざまな方策を講じてきたが、今年2月には「麦・大豆プロジェクト」を設置し、安定供給に向けて、本州で低迷する単収を向上させる方針を示している。

今年3月に閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」では、2030年(令和12年)時点の国産大豆の生産量目標を34万t(平成30年は21万t)、作付面積17万ha(同15万ha)、単収200kg/10a(167kg)に増加させることを打ち出している。品目別自給率は10%(6%)に引き上げる。

この目標に向けて、克服すべき課題として、
△国産原料を使用した大豆製品の需要拡大に向けた生産量・品質・価格の安定供給
△耐病性・加工適正などに優れた新品種の開発導入の促進
△団地化・ブロックローテーションの推進、排水対策の更なる強化やスマート農業の活用による生産性の向上
△ほ場に合わせて単収に取り組むことが可能な環境の整備
――を挙げている。

穀物課担当者は、「34万tは高い目標であるが、米の需要が減少する中で、需要のある大豆の生産量を上げるべく、水田を有効に活用することが必要」との認識を示している。

「食料・農業・農村基本計画」に記載している、「麦・大豆プロジェクト」では、農家自らがスマートフォンなどで低単収要因を分析し、ほ場に合わせた単収改善に取り組むことができるソフトの普及などを推進するとしている。

合わせて、国産大豆の需要をさらに伸ばすことにも取り組む。 

〈新品種導入を支援、フクユタカA1号など導入進む、産地と実需つなげる取組も〉
新品種導入ではこれまで、「九州地方におけるフクユタカの単収は良好な一方で、東海では収穫時期が遅くなると莢(サヤ)が落下してしまうとの報告があった。地域によっては従来の品種のままで単収が向上するのか懸念がある。そこで愛知では今年から、難裂莢性(莢がはじけにくい性質)を強化した豆腐用主力品種『フクユタカA1号』が導入されている」(穀物課担当者)とする。

同様に、北陸地域の主力品種エンレイに難裂莢性を強化した「えんれいのそら」の導入の動きもあるという。「農水省では、新品種の本格導入の前段階として試験栽培や、地域での勉強会などを補助金で支援している」としている。

加えて、大豆生産者一人が担う面積が大きくなっていることにも着眼し、単一品種に偏るのではなく作期の分散を図り、それによりリスクの低減につなげることの必要性も指摘する。「農水省では、地域における品種分散のモデル構築の支援も行っている」という。

また穀物課では、生産者のモチベーション向上などを目的に、「生産者と実需者の距離感をもっと縮めていきたい。実需が求めている品種を生産者に伝える意見交換の場などを開催していきたいと考えている。新型コロナウイルスにより、今はこのような場を設けるのは難しいが、収まった後には取り組んでいく」との考えだ。

取引価格の安定化に向けては、「(平成30年産から本格導入した)播種前入札をまずは活用してほしい。メーカーの視点で安心できる制度だ。

導入して最初の入札(平成29年産の試験導入)では、落札率は約4割に留まったが、今年産(令和2年産)は89%と高い落札率となり、浸透してきているのではないか」としている。加えて、「増産の取り組みはもちろん行っていくが、契約の慣習も少しずつ変えていった方が良いのではないか」との見方を示す。

さらには、令和元年産に関して、「平成25年産と環境が似ていたが、当時ほど入札価格は高騰しなかった印象だ。いずれにしても、今月末の最終入札の結果が発表された後、詳しく背景分析していく」としている。

〈大豆油糧日報2020年7月29日付〉