相模屋食料 コロナ禍で豆腐の安定供給に注力、グループ間の連携活きる/鳥越淳司社長インタビュー

相模屋食料・鳥越淳司社長
豆腐業界トップメーカーの相模屋食料は、コロナ禍という異常事態の中で、豆腐の安定供給を果たすべく、グループ間の連携や、これまでの災害時の経験を生かし、豆腐の需要拡大に対応した。同社の鳥越淳司社長に、今期の状況や今後の施策について聞いた。

――今期(2021年2月期)の進捗は

業績は順調な推移で、このままいけば通期売上高は310億円に到達する見込みだ。

しかし業績云々よりも、新型コロナウイルス感染拡大でスーパーに人が殺到し、食を繋げなければ日本はパニックに陥ってしまうという使命感のもと、豆腐の供給を守ることに注力した半年だった。欠品を起こさなかったのは恐らく当社だけで、他社が出せない分も何とか出荷した。

過去にも、東日本大震災や豪雪など異常事態を経験し、その時に取り組んできたことが今回に活かされた。また、以前から社内で活用していたメッセージ機能「アイメッセージ」がコロナ禍では更に役立った。ある拠点で原料などがひっ迫した際には、その情報が瞬時に発信・共有され、それに対する指示もリアルタイムで把握できる。

グループの相乗効果もあり、日本ビーンズ(群馬)やデイリートップ東日本(神奈川)と連携を図り対応した。それでも足りない場合は、余力があった京都タンパクから運ぶこともした。

――商品動向について

コロナ禍の当初は、木綿・絹豆腐、油揚げ、厚揚げといった素材型が非常に伸びた。購入してすぐに使う人、豆腐をさまざまな料理に使う人が多かったのか大容量が良かった。即食簡便のミールキット商品などはこの間、動きが止まったが、その後は徐々に売れるようになった。

〈救済企業の再建活動は順調、京都タンパクで10億円超の設備投資〉
――事業継続支援の取組について

再建活動の進捗は順調で、昨年7月にグループ入りした京都タンパク(京都)は、継続的に黒字化できている。12億円相当の第2期設備投資も開始した。木綿・絹、絹厚揚げといった、京都タンパク強みの商品のブラッシュアップを図っていく。

その他、日本ビーンズでは、木綿豆腐の新ラインを導入した。

一方、2019年9月にグループ化した丸山商店(福岡)の再建活動は、現地に行けずストップしている。新型コロナが収まり次第、力を入れていく。

――秋冬に向けての施策は

この秋冬は例年よりも、家で鍋を楽しむ機会が増えるだろう。年末のすき焼き需要に向けても準備を進める。

「京ゆば」をテーマに、ゆば入りの鍋用おぼろ豆腐「はんなり湯葉おぼろ」や、「京ゆばとおぼろとうふの豆乳湯葉鍋」「同湯葉鍋」(一人分の簡便セット)を新発売した。「ハレの日」需要が高い湯葉を、より身近なものにしたい。

――プラントベースドフード(PBF)について

PBFの時代が到来しており、展開を一気に強化していく。今春には、PBF商品「BEYOND TOFU(ビヨンドトーフ)」を全面的にリニューアルした。「PBFと言えば豆腐」と言われるように訴求していきたい。

――国産大豆値上がりなど原料高について

世界に胸を張って、豆腐は日本の伝統食品だと伝えていくには、国産大豆を使用するべきで、輸入大豆へのシフトなどは考えていない。近年、台風の頻発で作柄がぶれ価格変動しているが、それは世界中どこも同じことで、一時的に調達しやすい方を選ぶということはしない。

――来期以降の見通しについて

今後も、消費者の要望に応えていくのみ。要望を聞くのではなく、こちらから付加価値を提供できるかが重要だ。当社は、新型コロナの影響に左右されるところにいない。従来通りの(成長の)曲線を描いている。

〈大豆油糧日報2020年10月16日付〉