大豆たん白の設備投資目立つ、大豆ミートの定着のカギとなるのはおいしさ
流通業界でも動きが見られ、コンビニ大手3社が大豆ミートの商品化に本腰を入れ始めるとともに、イオンも10月6日、PB(プライベートブランド)の新シリーズ「ベジティブ」の第1弾として、肉を大豆に置き換えたハンバーグなどを新発売した。
大豆たん白は従来、食肉加工品の原料肉の置き換え需要が中心だったが、近年では冷凍食品や菓子、シリアルなど、さまざまな用途で使われ始めた。最近では大豆ミートとしての要望が増え、大豆たん白そのものの価値が認められ、「主役になっている」という声も原料として供給している製油メーカーから聞かれる。
日本植物蛋白食品協会が発表した2019年の植物性たん白の国内生産量、出荷・自社使用量とも前年を上回った。そのうち大豆ミートにも使われる粒状大豆たん白はそれぞれ6.1%増の3万3,297t、3.6%増の3万2,829tと拡大した。2020年上半期(1~6月)も粒状大豆たん白は、2.9%増、4.8%増とプラスで推移している。
市場の拡大に対応するため、設備増強の動きも目立つ。不二製油は、阪南工場(大阪府泉佐野市)に加えて、千葉工場(千葉市美浜区)内に年間9,000tの粒状大豆たん白を製造できる新工場を6月末に竣工し、生産能力を増強した。昭和産業は2020年3月、鹿島工場の大豆たん白の製造ラインへ設備投資を行い、生産能力が1割ほどアップしている。日清オイリオグループも、生産効率化により、需要拡大への対応を図るとしている。
欧米で増加しているヴィーガンやベジタリアンをはじめ、環境意識の高いミレニアム世代などから、大豆ミートを中心とした肉代替食品の市場が脚光を浴びている。大塚食品によると、2019年度は米国で約1,500億円、EUで約2,000億円の市場となった。また、日本の市場は2016年時点で131億円だったが、2022年には254億円規模になると予測されている。
新型コロナの影響で東京五輪は延期となり、インバウンドも激減しているが、大豆ミートを発売している各社は、インバウンドが回復する時のため準備を進めているようだ。
ただ、日本において大豆ミートの定着のカギとなるのはおいしさであろう。「おいしくないと一時的なものに終わってしまう」(イオン)、「味のレベルが低い製品が出ると、(すぐに落ち込んだ)豆乳の第1次ブームのようになりかねない」(不二製油)。肉に近い食感と風味の改善がポイントとなるようで、今後の各社のさらなる品質改善に期待したい。
〈大豆油糧日報2020年10月21日付〉