相模屋食料 再建企業の全てで黒字化、今年創業70周年「世界で戦える豆腐を」/鳥越淳司社長インタビュー
相模屋食料・鳥越社長
――今期を振り返って
今期の売上高は、当初見込みを上回る320億円(前年比9.5%増)で着地しそうだ。新型コロナウイルスによる影響に振り回された1年だった。2020年4月頃から豆腐の需要が拡大し、供給を守ることに注力した。結果として、ほぼ欠品を起こさず、お客様に豆腐をお届けできた。
内食需要は定着しているように思う。コロナ禍当初は、家庭内調理を強いられたような形だったが、今では家で料理するのが当たり前になってきているのではないか。2度目の緊急事態宣言による豆腐の需要に変化はほとんど無く、これまで通り木綿や油揚げ、厚揚げなどの需要が高いという流れが継続している。
――具体的な商品動向について
年末における焼豆腐の数量が史上最高となった。家ですき焼きをする人が多かったのではないか。当社では、すき焼きに使う肉にランクがあるように、それぞれのすき焼きに合う焼豆腐は何かを考え開発してきた。
素材型がけん引する傾向は変わらないが、即食簡便系も徐々に回復してきている。レンジアップの「ひとり鍋」シリーズは、前年を超える推移を見せる。 また、京都タンパクの商品が好調だ。現在は2度目の緊急事態宣言により旅行は難しい状況だが、昨年は比較的京都に多くの人が訪れたためか、京都ブランドに注目が集まった。
――プラントベースを切り口とした商品動向は
注目度はかなり上がっている。世界的に、動物性食から植物性食に移行しようという流れにある。2021年春には、「BEYOND TOFU」のオリーブオイルで漬けたタイプを発売する。そのほか、リニューアル品の拡充を計画している。
また、コロナ禍の影響か分からないが、「とうふにゅうめん」(豆腐麺)はこの秋冬、たん白質が摂れることをパッケージに記載し販売したところ、前年の約2.4倍売れている。
豆腐のメーンユーザーに向けた商品はもちろん拡充するが、「BEYOND TOFU」を中心とし、今まで豆腐に向いていなかった人に向けた商品も展開し、両方の施策を進める。
――グループ会社の進ちょくは
京都タンパクでは、11億円かけて設備工事・工場の改修工事をしており、ベーシックな木綿・絹から始め、とろっとした半熟タイプの揚げだし豆腐、絹厚揚げなど、京都のイメージに合う商品を出す準備を進めている。加えて、看板商品「絹ころ」をブラッシュアップするほか、需要が大きい焼豆腐を京都ブランドとして売り込む。京都タンパクには、追加であと3〜4億円投資をする計画だ。
2019年9月にグループ入りした丸山商店(福岡)は、2020年12月に黒字化することが出来た。コロナ禍で現地に行けず、また、九州産大豆価格が暴騰するなど困難があり、黒字化まで1年4カ月と時間は要したが、再建の道筋が立った。
日本ビーンズでは2020年、絶好調な木綿豆腐のラインを増設し、工場改装を含めると約4億投資した。今後は、相模屋の工場は拡張余地が少ないため、近隣の日本ビーンズに投資する計画だ。
京都タンパクは京都ブランドとして、今期は通期で黒字見込みの匠屋は当社グループで最上級の豆腐、石川サニーフーズは大ヒット商品の「おだしがしみたきざみあげ」といったように、全社それぞれの持ち味を生かした豆腐を作れるようになってきている。
――2021年に創業70周年を迎えられます
群馬・前橋の小さな豆腐店からスタートし、ここまでくることができた。支えてくださった方々に感謝したい。これからの当社は、豆腐メーカーであることに加え、プラントベースを広げていき世界で戦える豆腐を展開していきたい。
〈大豆油糧日報2021年3月3日付〉