国産大豆高騰、値上げをしなければメーカーは採算とれず国産大豆が使えなくなると危惧/吉田文吾商店・吉田薫社長インタビュー
これを食品産業新聞では、吉田文吾商店の吉田薫社長写真にインタビューを行った。吉田社長は、末端の豆腐価格の値上げを行わないと、製造メーカーは採算が合わず国産大豆の使用が難しくなってしまうと懸念を示す。また、需給のひっ迫感も指摘する。
吉田文吾商店・吉田社長
――令和2年産大豆の動向をどう見ていますか
令和元年産の在庫はほぼ終わりつつあり、早いところでは2020年12月から令和2年産を使い始めている。そのため、入札率も高くなっているのではないか。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大により、学校給食が休止となったほか、業務用の売れ行きが悪く、大豆が足りないという事態にはならずに終わった。しかし2021年については、学校給食は今まで通りとなっている。業務用は時短営業などで依然回復していないが、国産大豆よりも輸入大豆の使用がメインであり、国産大豆の需要は極端に落ちてはいない。
価格面は、契約栽培取引の値段も決して安いスタートではなかった。安値だったのは平均で8,000円台の播種前入札くらいだ。安い価格の国産大豆が本当に無い。
北海道は、天候の影響が多少あったが、数量は多い。それにも関わらず、2月入札の落札価格は1万2,000円近くを付けている。こんなにも高い価格で全量落札されているのが不思議だ。九州産の落札価格は1万4,000円〜1万5,000円台となっており、北海道や東北の1万1,000〜1万2,000円台の大豆を安いと思う人がいるのではないか。
ここ数年、西日本の事業者が高い札を入れ、東日本の事業者が北海道・東北・関東の大豆をなかなか手当できていない状況だった。しかし令和2年産入札においては、関東勢も値段を諦めて高い札を入れたと考えられ、なおさら入札価格が上がったとも考えられる。
――原料は高騰していますが、末端の豆腐に値上げの動きは見られますか
この高い価格の国産大豆を使って、採算が合うのか。メーカーによっては、値上げを要請しているところもあるようだが、受け入れてもらえず、どうも取引を切られてしまいそうだという。大豆だけではなく油なども上がっている。各メーカーが値上げに動いてくれれば良いが。
末端の豆腐価格は(1丁当たり)最低10円は値上げできないと、採算が合わず、国産大豆を使えなくなってくるのではないか。徐々に国産大豆の使用を減らすところも出てくるだろう。そうは言っても輸入大豆も、2020年のシカゴ大豆相場が$8〜9台だった時期と比較し、現在は30kg当たり500〜600円高い状況だ。
しかし2020年は、天候被害で暴騰した九州産大豆使用の豆腐において、値上げに動いたメーカーもあった。売上が落ちると思っていたが、逆に増えた。値上げすると売上が減少するとは限らない。ちゃんと売れる商品であれば、約10円の値上げは関係ないのではないか。
〈需給のひっ迫感を指摘、国産商品削減で需給バランス合うとの見方〉
――需給的にはどうでしょうか
令和2年産の集荷見込み数量(JA全農分)は、中粒・小粒含めて15万t台後半になるという話だ。小粒も使っていかないと、足りなくなるかもしれない。JA全農分ではない大豆もあり、それがどの程度あるかによっては十分供給が間に合うかもしれないが、このあたりの数字は見えない。
国産大豆の本当の需要は16万t〜16万5,000tくらいだと感じている。15万t後半では、ぎりぎりといったところではないか。
令和元年産が18万tほどあればよかったが、平成30年産から3年連続の不作のため、(繰越在庫が期待できない中で)やりくりが難しい。
国産大豆使用商品を削減するところなどがでてくると、需給バランスが合ってくると思う。
――今後の見通しは
令和2年産大豆の入札価格が下がる見込みは今のところない。しかし、これ以上上がるかというと、既によいところ(高値のピーク)にきているのではないか。
また、数量がとれている北海道ユキホマレ・とよみづきの価格が落ち着けば、平均価格も落ち着きを見せるだろう。
一方で、令和3年産大豆の価格が高くなるとは思っていない。低温倉庫に米がいっぱいな状況で、2021年は全国的に大豆の作付が増えると言われているためだ。異常気象が増えている中、順調な生育は難しいかもしれないが、ある程度作付面積が増えてくれれば、数量はそこそこ確保できると思う。
〈大豆油糧日報2021年3月24日付〉