J-オイルミルズ中期経営計画、初年度はコスト構造変革・付加価値化を加速、プラントベースフードを新しい柱に

J-オイルミルズ 八馬社長
新中計の初年度となる2021年度は、売上高は24.4%増の2,050億円、営業利益は25.2%減の50億円、経常利益は26.8%減の54億円、当期純利益は4.8%減の50億円を計画している。八馬社長は計画の前提として、「価格改定を発表しているが、上期は原料価格の上昇がそれを上回ることから厳しい状況が続くと想定しており、マイナスにならないよう費用の圧縮を含めて取り組んでいく。下期は8月からの価格改定を織り込み、50億円の利益確保を目指していく」と述べた。

その上で、「外食ユーザーを中心に厳しい状況が続いている一方で、原料も上昇する状況の中、荒波を乗り越えて、価格改定にも理解を得るべく、コスト構造変革、付加価値化の加速にしっかりと取り組む」と語った。

〈将来への成長基盤強化、プラントベースフードは家庭用と業務用で新しい収益の柱に〉
第六期中期経営計画では、2024年度に売上高2,200億円、営業利益110億円、営業利益率5.0%、ROE8.0%を計画している。八馬社長は「第五期中計での基盤固めは一定の成果があった。その上で30年度に向けた変革を第六期中計で実現していき、将来への成長基盤強化に取り組む」とした。成長戦略としては、「JOYLブランド価値向上」「高付加価値品の拡大」「油脂汎用品の収益力改善」「海外・スペシャリティフード事業強化」を掲げる。

外部環境の変化について、「内食需要は一定の水準で高まっていく一方、外食産業はコストダウンニーズが高まっていき、消費者における健康意識の高まり、企業には社会的課題に対する対応が要請される」とした。その上で戦略目標として、「マーケティング・ブランド戦略」、「高付加価値化推進」、「海外展開の加速」、「汎用油の収益性改善」、「バリューチェーン&業務プロセス改革」の5つを掲げた。

また、事業ポートフォリオの変革として、油脂事業の安定した収益基盤をもとに、高付加価値化やさらなるコスト削減に取り組む。2020年度時点で油脂事業は8割を超える売上、9割を超える営業利益の構造となっている。2024年度には、新たに立ち上げたスペシャリティフード事業の売上は全体の16%、営業利益は18%、2030年度に売上は22%、営業利益は36%へと貢献する構造をしっかりとつくっていくとした。

また、高付加価値品の比率は2020年度の売上は25%だが、2024年度には32%を目指す。2030年度には40%、加えて海外で10%と、「高付加価値品と海外で半分の売上を占める構造を実現していきたい」とした。粗利益は、2024年度に高付加価値品と海外で7割の実現を目指す。

「高付加価値化推進」のうち、プラントベースフードについては、「海外はもちろん日本でも注目されている。当社も油脂を中心にプラントベースフードに携わってきた経験を活かし、新たな展開を開始する」とした。J-オイルミルズは、アップフィールド社傘下のアリビア社の「Violifeビオライフ」の国内における独占輸入販売契約を締結し、植物性原材料を使用したプラントベースフード市場参入すると発表した。「ビオライフ」ブランドは、世界50カ国以上で販売されているプラントベースフードチーズのリーディングブランドと強調し、「家庭用と業務用で新しい収益の柱として成長させたい」と語った。2021年秋に展開予定とする。

大髙寛専務執行役員スペシャリティフード事業本部長は、「世界的に『ビオライフ』は1年間で2倍に売上が伸びており、米国の市場でも成功している。プラントベースフードのチーズは、味やテクスチャーが本物のチーズと比べて劣るので手が伸びないところがあるが、『ビオライフ』は非常においしく、テクスチャーもチーズにかなり近い商品のため、新しくプラントベースフードにエントリーするユーザーが増えている。日本のプラントベースフードの乳代替商品は大豆べースのものが多いので、差別化が図れる。パーム油フリーでココナッツ油ベースという付加価値も含めて、評価してもらえると考えている」と説明した。

〈3回の価格改定、適正な価格を実現しないと安定供給は厳しい〉
J-オイルミルズは4月、6月からの30円/kg以上の値上げに続いて、8月2日から50円/kg以上の価格改定を発表している。服部広取締役専務執行役員は、「3回発表するのは久しぶりで、しかも間が2カ月というのは初めてではないか。50円というのも過去50年で経験がない」と述べた。

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また、コスト環境について、「1年前のシカゴ相場と比べると、大豆は1.8〜1.9倍、ミールは1.4倍、油は2.5倍まで上がっている。これから天候が変動するにつれて、もう一段上がることもありうるので、少しイレギュラーだが、間を狭めて3回実施せざるを得ない」と説明した。

商談状況について、4月の値上げは予定に近い進捗といい、「次の6月の値上げも、相場の理解が得られており、手応えとしてはある。8月からの50円は相当大変とは思っているが、ステージが変わっており、世界全体で油の需給がタイトになると先々考えると、それだけの適正な価格を実現しておかないと、これからの安定供給は非常に厳しいと思っている」との考えを示した。

〈大豆油糧日報2021年5月24日付〉