ハラル・ハブに前進、インドネシアでハラル製品保証法が成立
▽認証権限を政府直下機関に移管
世界最大のムスリム人口を有するインドネシアが、ハラル認証制度のハブ化に向け動き始めた。昨年10月、インドネシア政府はハラル認証権限を同国宗教省大臣直下に置かれる「ハラル製品保証実施機関」に移管すると発表。インドネシア全てのイスラム教組織を統括するウマラ-評議会が行っていたハラル認証の権限を政府直下機関に移管するもので、認証機関を政府自ら管理することで、世界中から注目を集めるハラル・ビジネスの中核を目指す意向だ。
ハラル認証を行う団体は世界に150から200程度あると言われている。国民の9割をムスリム(イスラム教徒)が占めるインドネシアを筆頭に、アセアン地域のムスリム人口は全体の4割。ハラル認証の取得は、アセアン地域に進出する日本企業にとって不可欠であり、インドネシアのハラル製品保証法の成立は、現地で製品を製造する日本企業にとっても注視する必要性がありそうだ。宗教団体の持つ権限が政府機関に移管されることで、他のムスリム諸国への輸出障壁も引き下げられることが予想される。
ジェトロが発行する「Food&Agriculture」によると、ハラル製品保証実施機関(Badan Penyelenggra Jaminan Produk Halal:BPJPH) の新設は、ハラル製品保証法の法制化から2年以内に実施規定を制定し、その1年後に設立されるという。同法は、インドネシア領域内で搬入、流通、売買の製品について一部を除き5年以内のハラル認証取得を義務付けた。
BPJPHのハラル認証は、検査・試験を行うハラル検査機関と製品がハラルであるかを判断するウマラ-評議会が連携して行われる。同法案が成立したことにより、ウマラ-評議会は認証権限を失ったものの、製品がハラルであるか否かの重要な判断を引き続き行うこととなった。BPJPHの稼働開始時期は、2019年から2020年。運用が開始されるまでの移行期間中は、現行手続きが引き続き有効となる。
現在、ハラル認証機関を政府直下機関に置くのはマレーシアのみで、マレーシアではハラル・ハブを国策として掲げている。「マレーシアのハラル基準は世界で2番目(最も厳格なのはサウジアラビア)に厳しく、マレーシアで認証が取得できればイスラム圏のほとんどどこにでも輸出できる」との認識は、日本企業にとっても浸透している。マレーシアに続き、インドネシアもハラル・ハブに名乗りを上げたことで、今後イスラム圏各国での同様の動きが進むもようだ。
一方、ハラル認証については近年、イスラム協力機構(57カ国が加盟)が世界統一規格の検討を行うなど、数多ある認証機関の統一化に向け前進する動きが活発化している。ムスリム圏からの訪日外客誘致に向け活動を行う業界筋によれば、「インドネシアの動向は、他のムスリム国にも影響を与え、国が認証機関を管理する動きが活発化することも予想される。各国で考え方の違いもあるため、簡単には統一しない」との見方をしており、増大するムスリム人口を背景に各国ともハラル・ビジネスに注力する動きが進みそうだ。