冷食市場 逆風でも需要拡大期待
◎メーカーの開発企画力高まる
過去4年間、家庭用を中心に伸長を続けた冷凍食品市場だが、14年度は消費増税後の個人消費の弱さもあり、伸びは鈍化している。大手冷食メーカー各社は今年2月~3月にかけての出荷価格の改定を発表しており、今後の需要の見通しも不透明感が漂っている。市場にはすでに春の新商品が出回っているが、値上げを伴う今季は、基幹商品のブラッシュアップが目立った。ただしその一方で総需要の拡大に向けた新提案も見られる。大手メーカーはマーケティング力を着実に高めており、それが値上げ環境においても需要拡大を期待させる要素になっている。
14年度の家庭用冷食の市場規模は味の素冷凍食品の調査によれば7319億円で、伸びが鈍化したとはいえ08年度から25%拡大している。一方で業務用では外食市場に苦戦業態があるものの、中食市場の拡大が冷食の需要を押し上げている。
一昨年末の農薬混入事件の影響が残る中でも、安定して高い需要が続いたことに業界は勇気を持ちながらも、円安の急進やエネルギーコストの上昇などにより、冷食業界の大部分が収益性を落としている。次年度は値上げの実施が最大の課題とされる所以だ。
値上げが需要動向に及ぼす影響の予測は難しいが、実は先行きを不透明にしているのは消費動向ばかりではない。
家庭用では小売店のEDLP化やPB商品の増加、チルドや常温食品の競合する簡便商材の増加などが、業務用ではデリカや外食など業態の垣根を越えた競争の激化や勝ち負けの鮮明化などが、ある。冷食の販売環境には大きな変化が起きているのだ。
値上げの交渉と重なった今春の新商品の提案においては、定番が外されないように主力商品の改良やブランド力強化に取り組むメーカーが大半だが、同時に新需要の開拓を目指したチャレンジも行われている。
味の素冷凍食品は家庭用の弁当商品を「定番・健康・楽しさ」に3分類し、パッケージデザインも変更して、より選びやすい売場づくりを提案した。業務用ではこれまで販売対象にならなかったカクテルバーなどでも活用できるアイスデザートに挑戦している。
ニチレイフーズは家庭用で「本格」品質をうたった「焼おにぎり」などを近年ヒットさせてきた。今春は「上等洋食」で既存の冷食とは次元の異なるブランド提案を行っている。
冷食の範疇にとどまらない挑戦をしているのが、マルハニチロだ。独自技術を用いたロングライフチルド惣菜を今春から本格展開する。調理済み食品に対する需要を多方面から取り込もうとしている。