エィペックス・キョクヨー、原料・製造にこだわる良質な焼魚製品【注目工場の視察(上)】
極洋「シーマルシェ」ブランドで発売している冷凍焼魚の製造を担う、エィペックス・キョクヨー(兵庫県姫路市、英賀隆(あが・たかし)社長)は焼魚の製造を始めておよそ40年の歴史をもつ。こだわりの品質が評価されており、トレーパック入り商品を中心に大手量販店へ焼魚を販売している。13年に極洋が資本参加した後も積極的な設備投資を続け、深絞りやガス充てんなど新しい包装形態への対応、燻製商品の研究・開発にも取り組んでいる。欧米市場をにらみ、輸出に向けてHACCP認証取得の取り組みも進めているところだ。本紙など11社が加盟する冷凍食品記者クラブはこのほど、同社を取材した。
同社はメーンの魚種として15アイテム、総アイテム35品ほどを取り扱う。シルバー、カラスカレイ、サワラ、銀鮭、紅鮭、ホタテ、イカ–など。キョクヨーグループではあるが、「原料はすべて、可能な限り鮮度と質の良い最上の品、ベストシーズンの魚しか使わない」(英賀社長)として、仕入れ先に制約なく良質の原料を選んでいるという。
凍魚を使用した焼成加工だが、この仕入れから、原料の下処理、独自に開発した焼成機など加工工程の各所に独自のこだわりを貫くことで、差別化を実現している。
主力のトレー入り焼魚は関西圏向けにはチルドで、関東向けには冷凍・チルドで流通する。冷凍とチルドの構成比は半々だという。現在は沖縄にも取引先が広がり今後、東北・北海道でも採用が決まっているという。極洋向けの製造はシーマルシェのほか外食・中食用を含め15%ほどを占める。
同社が現在の工場を新築したのは2001年。鉄骨3階建て、延床面積6,000㎡を超える規模の工場は当時、焼魚専門工場としては“異常”に大きかったという。
英賀社長は「当時はさまざまな事件とその報道が繰り返され、食の安心・安全が食品製造の必須条件となった。築後30年の旧工場での生産継続は無理と判断し、新工場を建設した」「焼魚専門工場としては異常に大きく、批判もあったが、現在に至っては間違いのない選択だったと確信している」と言う。
現在の生産能力は1日6時間半の稼働で4万2,000パック、切身にして日産10万枚となる。
量販店向けの販売が現在、8割以上を占めているが、新チャネルの開拓も目指している。CVs向けにガス充てんパック包装で賞味期限を10日~2週間程度に延ばしたロングライフ商品を開発中で、来年をめどに発売したいとする。
新機軸の商品として、魚介の燻製の生産にも取り組んでいる。「食のグローバル化が進み、いずれ日本国内でも需要が伸びてくると予測して7年前から開発を進めてきた」(英賀社長)。一般的なバッチ式の燻製装置のほか、連続式の装置を開発した。これより大量生産が可能となり今後、ホテル・レストラン・百貨店・ギフト商品など「価値的要素が受け入れられるような販売戦略を模索」していく考えだ。
また来春には毎年ベルギーのブリュッセルで開催されているシーフードショーに「サンドイッチ用の燻製焼き」を出品する予定だ。
海外市場としてはすでにシンガポールへの輸出を行っている。外食店のほか、大手スーパー「コールド・ストレージ」で照焼きなどの焼魚を導入しているという。英賀社長は「国内のみならずッ広く海外へも和食、焼魚のおいしさが認められるようになると確信している」と、海外市場開拓に意気込んでいる。
輸出に向けてHACCP認証を来年中に取得する見通し。まずは対米向け、その後EU向けの認証取得を目指す考えだ。なおHACCPへの対応を見込んで当初から、工場の加工室内部はすべてパネル構造で窓のない構造になっている。