辛口缶チューハイ・ハイボールが好調、ビールユーザーがスイッチ

「“とりあえずビール”に代わるほろにがいチューハイ チューハイ事業部の謀反」–。ビールメーカーがこのようにキャッチコピーを作らざるを得ないほど、辛口の缶チューハイ・ハイボールが人気だ。手頃な価格で、アルコール8%以上と飲みごたえがあるため、若者層・中高年層問わず、ビールに代わるお酒として1杯目から楽しむようになった。甘くなく、食事の邪魔をしないことがビールの代替需要を取り込んでいる。

これまで、缶チューハイ飲用者には「甘さが強い」「食事に合わない」などの潜在的不満があったが、それをうまく掬い取った形だ。低アルコール飲料市場はサントリーとキリンビールが2強だ。1~6月の販売実績は、キリンが前年同期比12%増となった。サントリーも2ケタ増とみられる。特に伸びているカテゴリーが、ストロング系(アルコール8%以上)だ。2014年、このカテゴリーは、低アルコール飲料市場全体の前年比7%増を上回る11%増になったとみられ、市場で3割超のシェアを占める。代表的な商品であるサントリー「-196℃ストロングゼロ」は11%増、キリン「氷結ストロング」は2割増、宝酒造「焼酎ハイボール」も12%増だった。「-196℃ストロングゼロ」は、「-196℃」ブランドの約9割を占める。そのなかでも13年4月に発売された「ストロングゼロ〈DRY〉」が人気だ。糖類ゼロ・甘味料ゼロ・プリン体ゼロ、高炭酸ガスなどが特徴だ。

2014年6月にキリンビールが発売したストロング系の新商品「ビターズ」は、5月末までの約1年間で520万c/s(250ml×24本換算)を販売した。キリンの第2ブランド「本搾り」が14年間で554万c/sだから、それと並び立つブランドとなった。

宝酒造は、この6月に大型の新商品「ゼロ仕立て」を発売した。香料や着色料もゼロとして、アルコール8%の飲みごたえと“果汁感があるのに辛口”という、ありそうでなかったコンセプトで商品化した。好調な「焼酎ハイボール」とともに2本柱として育てる。

飲食店でもハイボール人気は加速している。都内の業務用酒類卸の最大手であるカクヤスは、炭酸飲料水の販売量が5年連続で過去最高となった。「日本の亜熱帯化もあって、アルコールと炭酸は切っても切り離せなくなっている」との指摘もある。