インタビュー サッポロビール社長・尾賀真城氏 成熟社会でビールも転換点に、ビールの本来持つ楽しさを再訴求
–クラフトビールブームですが、もともとサッポロはビールの銘柄を多く手がけてきました。
尾賀 ビールは装置産業だから、量を追求していかないといけないのは自明だ。しかし、一方で、成熟社会を迎え、今のビールファンは違った側面を求めている。多様なニーズに対応して、メーカーも変化していくべきときだ。その転換点にいると思う。もっとビールを“楽しい飲みもの”にしていかないといけない。
お酒の消費には流行があって、戦後の清酒を経て、ウイスキーからビール、そして焼酎、今、ワイン・低アルコールとなっている。もう一回、ビールに関心をもってもらえれば、活性化の可能性は十分にあると思う。
これまでやってきたプレゼントキャンペーンや、あるいは新商品への関心が薄れてきていると感じる。そこで、当社は例えば、ネット企画の「百人のキセキ」で、応募頂いたビールファンを集めて、自由に議論し、自分たちの欲しいビールを開発してもらった。できた商品のコンセプトは、意外にも、これまでのようにガブガブと飲むものでなく「ひとりでじっくりと味わう」ビールだった。
また、「ジャパンプレミアムブリュー社」というクラフトビールの会社を立ち上げた。これもひとつのチャレンジだ。クラフトビールの消費トレンドでは、例えば、今まではちょっと考えられなかったような、大量のホップを投入した「超苦いビール」が受けたりしている。いろんな可能性を試していきたい。
だからといって、新しいことをやるだけではもちろんない。当社のビールの2つの機軸ブランドである「黒ラベル」「ヱビス」をどう展開するか。つまり「★のマーク」と「ヱビスのマーク」だ。これは本来のブランド価値というべきで、発泡酒・新ジャンルにはない。この価値を、いかに伝えて、お客様に響かせるか。お客様に「今日も飲んだし、明日も、これからも」というふうに思って頂けるにはどうしたらよいか。お酒は、新しい機能や味、といったことももちろん重要だが、やはり「つながり」という部分が大きい。この普遍的な価値をいかに高められるかだ。これは、売り方でいえば、少なくともビールに関しては、これまでのようにカートンに景品を付けたりする販促は再考すべきだと思っている。お客さまはブランドには「敏感」だ。よく見ている。響いてもらえれば、お客さまにはリピートしてもらえる。
当社の上半期だが、このような考え方のもと、ビールに注力した結果、「黒ラベル」「ヱビス」「サッポロラガー」「エーデルピルス」「クラシック」などは、おしなべて好調だった。ビールの競争関係では善戦していると考えており、下半期もこの流れを加速させる。
(以下、本紙にて)