1~6月のビール類、怒涛の新商品ラッシュ、酒税改定にらんだ競争が火蓋切る

上半期(1~6月)、ビール5社の新商品は、留め型/PBを含むと40商品という怒涛の新商品ラッシュとなった。昨年同期の数が26であり、各社、既存ブランドのエクステンションを中心に需要喚起に取り組んだ。ビール5社の課税数量は前年比0.6%減。新商品ラッシュで微減に食い止めたともいえそうだ。今秋、なお未知数とはいえ、政府・与党によるビール減税・新ジャンル増税の再議論もスタートする。酒税改定を睨んで、すでに戦いの火蓋は切られているともいえそうだ。

上半期は新商品36、リニューアル14、留め型4の合計54。昨年同期は新商品22、リニューアル7、留め型4の合計33だった。

各社が新商品を多く投入している背景として、まずは消費マインドの変化がある。「消費増税前は定番ブランドに回帰していたが、いまは違う流れがある。いまの消費者は、目新しいものに生活の豊かさを求める」とメーカー幹部。

ただし、新商品の上市には、開発費・小ロットによる生産・マーケティング・広告などの新規コストが発生することは事実。それをうまく回避する方策が、一定の地位を占めている既存ブランドのエクステンション(派生商品)だ。これについても一時期は「既存ブランドのブランド価値を棄損する怖れなしとはいえない」として、各社、及び腰の部分もあったが、現在は百花繚乱となっている。これも消費マインドの変化が背景にある。「安心感のある定番ブランドだからこそ、ユーザーは、そこから一歩、踏み出したものを求めている」(同)とみる。

ビール類で毎年1億c/sを超えるトップブランドである「アサヒ スーパードライ」は、今年、期間限定品であるとはいえ2、3月に「ドライプレミアム 煎りたてコクのプレミアムビール」「エクストラシャープ」「スペシャルパッケージ」を、5月に「ドライプレミアム 贅沢香り仕込み」を、またギフト限定商品として「ドライプレミアム 和の贅沢プレミアム」を上市した。「スペシャルパッケージ」は花見の時期に発売したピンクの「スーパードライ」で、これまで飲んだことのない女性が手に取ったという。超辛口の「エクストラシャープ」は、好評につき、9月に第2弾を発売する。

「キリン 一番搾り」は3月に「一番搾り 小麦のうまみ」を、4月に「全国9工場の醸造家がつくる9つの一番搾り」を発売した。「キリン のどごし生」は1月に「のどごしオールライト」を、5月に「のどごし生 青空小麦」を発売した。9月にも「夜のどごし」を発売する。

「サントリー ザ・プレミアム・モルツ」は1月に「初仕込み」、3月に「香るプレミアム」、また「マスターズドリーム」を発売した。

エクステンション商品は、いわばこれまでのブランド投資にオンすることができるという意味で、新規に発生するマーケティング費用を最小限に抑えられることが最大のメリットだ。ある意味で、ビールの世界が成熟していることを物語るもので「これまでの大量生産・大量マーケティング投資という時代は終焉しつつある」(メーカー幹部)との見方も聞かれる。現在は、徹底した需要予測とサプライチェーンマネジメントにより「小ロットでもかつてのようにはコストは大きくならない」という背景もある。

今秋に予定されている税制議論では新ジャンルの増税と、ビールの減税が再び議論される。「まだ未知数とはいえ、昨年、実現一歩手前だったことを考えると、これまでのように無風という可能性は考えられない」(同)ことから、酒税改定を見据えた新しい競争がすでに始まっているともいえる。