日本の國酒 改めて発信 都内に飲み放題、新たな動き

日本の國酒である「焼酎」はこのところ、日本酒やウイスキー、日本ワインなどに話題をさらわれ、市場自体も停滞状況となっていた。九州を主産地とするため、このたびの熊本地震では、建物の大きな被害を訴える蔵元は少なかったものの、流通に影響が出たうえ、九州全体に観光客が減少し、自然、宿泊所や飲食店、土産物店の客足に影響が出て、各蔵の売上に少なくない打撃を与えている。

現在、流通は落ち着いて、あとは観光客の戻りを待ちたいが、外国人を中心に戻りは遅いとみられ、国内では本州を中心に応援需要も出ているが、地場中心だった蔵元には厳しい状況が続いている。

「話題が少ない」と近年同じようにささやかれている焼酎業界にとって、この状況だからこそ、商品に磨きをかける、新たな飲み方提案を行うなど、焼酎の新たな魅力の発見・発信、そして焼酎の魅力を改めて見直そうという動きが活発になって久しい。各蔵の地道な努力がそろそろ実となり、結果となって大きなうねりとなる可能性も感じさせる。

トップの霧島酒造は2ケタ増で売上を更新しており、麦の「いいちこ」(三和酒類)もカップを中心に好調で増収を果たした。女優・吉田羊さんを起用した「そばソーダ」が好調な雲海酒造は馴染みの無かった層に新たな魅力として、蕎麦焼酎をソーダ割りという形で普及している。米焼酎は地震のあった熊本が中心で応援需要も受けながら、「米をつかった蒸留酒の魅力」を改めて訴求し、国内外にアピールしている。

どの原料でも、ソーダ割り提案が盛んで、長期熟成酒、希少原料を使った商品など、付加価値商品の動きは活発とし、既存のユーザーにはより深みのある商品提案でさらにファン化し、新規にはソーダ割りでとにかく良さを味わってもらう仕掛けだ。

このたび、九州本格焼酎協議会が行ったネット調査では、焼酎に馴染みの無かった若年層の方が、「伝統がある」「國酒」といったイメージは持っており、決して「古臭く、オヤジの飲むもの」だけの印象ではないことがわかった。

新たな動きとして、若者の街・東京の新宿で3000円飲み放題の飲食店が7月8日にオープンする予定で、日本酒で同様のコンセプトを成功させた20代の会社が仕掛けている。彼らは「かつての焼酎ブームから現在まで、衰退産業として焼酎業界を捉える人も多いが、市場に対し、焼酎が好きな潜在層もまだまだ沢山いると考えている」とし、「焼酎を飲んでみたいけど、どんなものを飲んでよいかわからないという人」に対し、様々な原料の焼酎を用意し、多くの割材、トッピングを揃え、「あなただけのオリジナル焼酎カクテル」などをつくって、焼酎の新たな魅力をお客さん自身に発見してもらおうという「焼酎ラボ」を掲げている。

こうした動きに対し、「飲み放題では本格焼酎の価値が損なわれるのではないか」「うちはもっと本流の魅力を訴求してファン化していきたい」「若年層に裾野が広がっても、また価格競争では元も子もない」など懸念を示す声もあるが、こうした賛否の声、有象無象も含めて多くが表出する状況が活性化の一つのカタチともいえ、焼酎はこれから面白くなりそうだ。