「新取引制度の前提崩れる、取引条件の改善を要請へ」-全国卸松川会長
全国卸酒販組合中央会は5日、6月22日に新会長に就任した松川隆志氏(日酒販代表取締役会長)が専門紙との会見を行った。「10年前に新取引制度が導入され、コストオンの納価になるとみていたが、そうなっていない。むしろ、いまはその前提条件が崩れている」と指摘し、メーカー・小売への取引条件の改善を要請していくと強調した。
まず、新取引制度以降の酒類業界と現状認識について「酒類市場は飲酒人口の減少で1人当たりの消費量は、ピーク時の80%になっている。平成8年をピークに減少し、平成26年はピーク時の86%となっている。しかし、構造的に、供給は減らない、結果として供給過剰から過当競争、そして低価格販売となっている。10年以上前になるが、平成17年に、建値制のもとで多額のリベートが横行し、それを原資として安値になる、というような状況に当局の指導もあり、各段階でコストオン方式に切り替わった。コストオンの見積もりで、納価が決まるというあるべき姿になっていくとみていた。しかし、相前後して、小売免許の緩和が急速に進み、売場は一般酒販店から大規模小売店に移って行った。この過程で、適正なコストオンで納価を決定するという当初の前提が困難になり、結局、過当競争となった」と指摘した。
他方で「近年の想定外の物流コストの上昇という点もある。アウトソーシングしている委託業者からの要求も大きい。この2つの点から、新取引制度の前提が崩れている。現実を踏まえて、卸業が担っているサービスを続けられるように、取引条件の改善を図るよう、メーカー・小売に要請していくことが必要だ。一朝一夕に実現しないが、一方で、卸業の方も、状況の変化に踏まえて、物流の共同化などに更に取り組む必要がある。組合として音頭を取ることはできないが、雰囲気の醸成には努めたい」と述べた。
成立した改正酒税法での“公正取引の基準”に対する要望としては「財政物資であり、致酔性を持つという特殊性に鑑み、過度な価格競争の防止が目的だ。たばこは公定価格だが、一部の例外を除けば、価格は独禁法が取り締まる。平成22年に課徴金制度が導入されたが、これでは不十分との議員の考えだった。今後、独禁法によるスキームと、今回のスキームの2つが公正取引の基準のベースの考え方になる。基準は国税庁が告示で示す。実際には、効率性・コスト性にも差はあるが、経済合理性のないところは是正されるべきだ。新しい基準をつくることは必要だ。ただし、取引価格は市場経済で決まるもので、当然、両者間の交渉で決定する。当局から見て、基準に適さないという場合でも、時間的猶予が必要になるだろう。運用は取引の実態を踏まえてほしい。このあたりは積極的に姿勢を示して要請していく必要があるだろう」と述べた。(以下、本紙にて)