食料自給率目標を「現実的な」45%に設定-農水省が基本計画案提示

農水省は17日の食料・農業・農村政策審議会企画部会に、「新たな食料・農業・農村基本計画(案)」を提示した。同基本計画はおおむね5年ごとに、10年先を見通して策定(閣議決定)しているもの。食料自給率目標(カロリーベース)では、10年後の2025年(平成37年)に「45%」を目指す。現行基本計画の2020年(平成32年)「50%」から5ポイント低下しており、企画部会の検証で現行目標を「現実味にかける」(2013年度で「39%」)と判断、現実に見合った目標設定とした結果、前・基本計画の2015年度「45%」に戻した格好となった。同様に生産額ベースの自給率目標も、現行計画「70%」から「73%」とした。

これらに伴い、食料自給率目標のベースとなる生産努力目標では(資料欄参照)、2025年度に牛肉52万t(2013年度51万t)、豚肉131万t(同131万t)、鶏肉146万t(同146万t)とした。牛肉は1万t増加、豚肉、鶏肉は現状の維持を目標とした。なお食料消費見通しでは、国内消費仕向量を牛肉で113万t(同124万t)、豚肉227万t(244万t)、鶏肉208万t(同220万t)と、少子高齢化の進行による摂取熱量の減少などを加味して、それぞれ減少を見込む。

目標達成に当たり克服すべき課題としては、牛肉では①消費者ニーズの多様化に対応した特色ある牛肉生産や輸出促進などによる国産牛肉の需要拡大、②肉用牛繁殖経営の規模拡大や肉用子牛の供給拡大、生産性の向上、肉用牛経営の収益性の向上を通じた生産基盤の強化、③国産牛肉の処理施設の再編・合理化-を挙げている。豚肉では、①種豚の改良、飼養管理の改善・高度化などを通じた輸入品と差別化できる特色のある豚肉生産や加工・業務用利用の拡大による国産豚肉の需要拡大、②環境問題などへの適切な対応と収益性の向上を通じた生産基盤の強化、③国産豚肉の処理施設の再編・合理化-など。鶏肉では、①地鶏などについての増体性、繁殖性の向上に加え、特色のある鶏肉生産や加工・業務用利用の拡大による国産鶏肉の需要拡大、②肉用鶏経営の収益性の向上を通じた生産基盤の強化-など。

さらに講じるべき施策については、畜産では高齢化による離農や後継者不足などを背景に農家戸数や飼養頭数が減少しており、畜産農家をはじめ地域に存在するコントラクターなどの外部支援組織や関連産業の関係者が有機的に連携し、地域全体で畜産の収益性を向上させる取組み(畜産クラスター)の推進により競争力を高め、生産基盤の強化を図ることとしている。

一方で、国際的な動向に対応した食品の安全確保と消費者の信頼の確保、生産・加工・流通過程を通じた新たな価値の創出による需要の開拓、グローバルマーケットの戦略的な開拓、様々なリスクに対応した総合的な食料安全保障の確立などを挙げている。

なお今回はじめて、わが国の食料の潜在生産能力を評価する食料自給力指標を提示した。これは2013年度の値を使い、パターンA(栄養バランスを一定程度考慮して、主要穀物を中心に熱量効率を最大化して作付する場合)からパターンD(いも類を中心に熱量効率を最大化して作付する場合)の4つのパターンを設定して試算したもので、1人1日当たり推定エネルギー必要量2,147kcalに対しパターンAでは1,495kcal、パターンDでは2,754 kcalを供給できるという。ただ、食肉関連ではパターンAでは、焼肉を10日に1皿(1日11g)食べることが可能だが、パターンDでは18日に1皿(1日6g)との設定となっている。農水省では、この目標を掲示することで、食料安全保障に関する国民的議論を深め、食料の安定供給の確保に向けた取り組みを促進することにしている。