畜産・酪農法人から取組事例をヒアリング、次回論点整理へ-自民・畜酪小委

自民党は18日、畜産・酪農対策小委員会(坂本哲志委員長)を開き、肉用牛・酪農の生産基盤強化と配合飼料価格安定制度の安定運営に向けた議論の一環として、16日の会合に引き続き農業生産法人からのヒアリングを行った。今回も、▽㈲有村ファーム(鹿児島・鹿児島市、酪農)▽前田牧場(長野・高山村、酪農)▽きもつき大地ファーム(鹿児島・鹿屋市、肉用牛繁殖経営)▽㈱ノベルズ(北海道・上士幌町、肉用牛経営)–の4社を招き、それぞれの経営の取組みや成果など説明を受けた。次回会合では、5月末に予定している畜産・酪農の中長期的対策のための提言書のとりまとめに向けた論点整理を行う予定。

このうち、きもつき大地ファームは、JA鹿児島きもつきが90%出資、新規就農者が10%出資し、2農場で計1,000頭の繁殖雌牛を飼養している。鹿児島きもつき農協畜産関連事業部の月精悟部長によると、地域の肉用牛繁殖農家と頭数減少に対応するため、国の「草地畜産基盤整備事業」を活用し、繁殖部門、子牛育成部門、飼料部門に分業化し、このうち繁殖部門として09年に同社が設立されたという。農場では繁殖管理の効率化のために発情発見装置と分娩監視装置を導入したことで、労力軽減だけでなく、事故率の低下など繁殖成績も向上したという。結果、平均分娩間隔は356日と県平均(406日)よりも短縮され、年間の子牛生産頭数は1,033頭(14年

実績)と高成績を実現したという。月精部長は今後、高能力の雌牛に更新しつつICT(情報通信技術)を活用しながら規模拡大を図ってゆきたいとしている。

ノベルズは、交雑種雌牛約7,300頭を飼養し、06年度から交雑種一産取り肥育を実施している。これは黒毛和種から取り出した受精卵を交雑種に移植・妊娠させ、生まれた黒毛和種の子牛を肥育農家などへ出荷し、出産を終えた交雑種雌牛はハーブ入り飼料で10カ月程度肥育し「十勝ハーブ牛」として出荷(33~35カ月齢)する仕組み。現在は黒毛和種の子牛を年間2,800頭(14年度実績)出荷している。ノベルズの延與雄一郎代表によると、交雑種の雌牛は去勢牛に比べて肥育期間が長く、枝肉価格も安いため需要が低いが、この雌牛を一度繁殖利用し、分娩後の肥育で美味しい牛肉を手頃な価格で提供することが一産取り肥育のねらいという。こうした交雑種雌牛を有効活用した取組みの結果、子牛と枝肉の両面で販売収入を確保することができ、さらに交雑種雌牛を長期肥育することで牛肉の旨味が濃縮されるとともに、ハーブ給与で付加価値を高めて販売できるという。現在はノベルズを含む7つのグループ会社でノベルズグループを形成(社員200人、牛1万7,800頭)、肉用牛生産だけでなく牛肉販売や酪農も手掛ける道内最大の乳肉複合経営となり、グループ総売上高は95億円に上るという。