【11月の牛肉需給展望】和牛全体で上昇し、和去A3で2,500円台に乗せるか
[価格見通しなど]10月の枝肉相場は、販売こそ振るわなかったものの、市場開催日が少ないこともあって和牛の出荷頭数が概算で16%前年を下回り、和牛の不足感から全体的に上昇した。銘柄牛は、精肉ギフト向けの手当てもあったと見られる。一方で、交雑種は出荷頭数が比較的に潤沢だったこともありB3で続落した。11月の見通しでは、中旬以降は野菜価格も落ち着き鍋需要が本格化することで全体的に上昇傾向を続け、和牛に比べ割安感が出た交雑種の上げ幅が大きいと見込まれる。
16年10月の東京食肉市場の規格別の価格(生体、消費税8%込み)は、和去A5で前月比77円高の2,912円、A3は57円高の2,447円となった。また、交雑B3は14円安の1,682円、B2は6円高の1,513円、乳去B2は39円高の990円となった。
11月の見通しでは、農畜産業振興機構の予測によると、成牛の出荷頭数は0.8%減の10万5,400頭、前年に比べ、と畜場稼働日数が前年を上回るため、1日当たりの出荷頭数ベースでは3.7%減を見込む。品種別には、和牛は5.3%減の4万7,500頭、交雑種は9.7%増の2万3,100頭、乳用種は1.1%減の3万3,400頭が見込まれる。
輸入牛肉は同機構の予測では、チルドの10月輸入量は1万7,100t、11月が1万7,900tと1万8,000t前後で推移すると見込んでいる。豪州産の減少が見込まれる一方で、米国産は生産量の回復に伴い増加が見込まれる。
消費面では、ある量販店の10月の和牛・交雑種の売上高は8%減、輸入牛肉は10%増、合計で3%増(既存店)となった。全体の売上が増加したのは、日曜日が1日多かったたことが要因であり、国産の牛肉の売れ行きは良くなかった。11月に入り、この量販店をはじめ各社とも、牛肉の販促に力を入れ、鍋需要が一気に盛り上がることを期待している。首都圏では、気温は平年並みまで下がるものの、天候不順による野菜の高値が続き、和牛・交雑牛の売れ行きは今ひとつ。しかし、野菜の生産も徐々に回復しており、価格が下がれば、一挙に需要が拡大することも期待される。また、引続き銘柄牛は精肉ギフトの手当てがあるとともに、例年通り11月は共励会などが多く、良い牛が集まることで相場も上昇する傾向にある。
競合するチルドビーフの価格や供給では、米国産チルドの11月生産・年末玉の成約価格は、ショートプレートで約10%、チャックアイロールで約20%上昇したとみられ、供給量は12月に向けて絞られると見込まれる。豪州産は、現地で出荷頭数が少なく、日本向けの数量が減少、価格も部位によって上昇が目立っている状況だ。
これらを勘案すれば11月の相場は、和牛は全体的に強いものの、末端の販売がついて来ることができるかを考えた場合、極端な上昇は難しく、各等級で50円前後の上昇、一方で、これまで軟調で和牛に比べ割安感が出た交雑種、ホルスは、競合する輸入チルドの価格上昇もあり、50~100円前後の上昇と見られる。そのため、和去A5で2,950円前後、同A3で2,500円前後、交去B2は1,600円前後、乳去B2は1,050円前後と見込まれる。
[需要・販売見通し]10月は、売場がスライス材に切替わり、鍋需要が期待されたが、野菜の高値で値段の高い牛肉が敬遠される傾向が強かった。11月に入っても野菜の価格は下がっていないが、農水省の予測では、ハクサイ、キャベツの生産は徐々に平年並みに戻るとしている。気温も首都圏では平年並みに冷え込んでおり、今週末以降には鍋需要が盛り上がることも想定される。卸関連から現状の荷動きを聞くと、末端では動いていないが、肩ロース、ロースへの引合いが増えている。また切落し材はここまでもソコソコ動いており、今後もウデなど切落し用は堅調。ただ、モモの一部は出荷が少ない中でも動きは鈍い。
品種別には、和牛はお歳暮の精肉ギフト用に銘柄牛の引合いが入る。末端で極端に売れているわけではないが、出荷頭数が少ない中で相場高が続く。交雑牛は和牛に比べ出荷頭数が多く、相場高で販売がし難くなっていたが、ここにきて和牛との価格差が開き、再び販売し易くなったことで引合いが増えている。また乳去は、米国産チルドのショートプレート、チャックアイが4月以降、大量に輸入されたことで、売場が輸入にシフトし相場も下げていたが、米国チルドの成約価格が上昇したことで、一部で国産のホルス、交雑に戻ることも想定される。実際に、今週に入りホルスの肩ロースには引き合いが入っているという。