昨年以上に注目集まる個包装タイプ 今シーズンの鍋つゆ市場
◎野菜などとの連動販売に期待大
今シーズンの鍋つゆ市場は、個包装(小分け)タイプが昨年以上に注目を集めている。鍋つゆは調味料ではあるが、精肉、魚介類、生鮮野菜などとの連動販売が期待できることから量販店にとっては秋から春先まで期待の商品群だ。特に個包装タイプは1人鍋という新たな需要を創造するだけに熱いまなざしが注がれる。
味付き鍋(よせ鍋類)などの専用鍋つゆ市場は昨シーズン(9~2月)も順調に伸長し、300億円に達した。夏でも野菜摂取意向から鍋メニューを行う消費者がいること、夏季用に鍋つゆの汎用性を訴求することで、春夏にも数十億円の市場が誕生しており通年では330億円規模に達したとみられる。
鍋つゆの主戦場は約8割を占める3~4人用のストレートパウチで、失敗がなく、しかもおいしいことから02年にはビン・PETを逆転して主役に躍り出た。現在では8割を超えるとみられる(図参照)。しかし、ストレートパウチは、750~800gという重量や、使い切りで量の調節ができないないというマイナス面も否定できない。
そこに登場したのが12年秋に味の素が発売した「鍋キューブ」だ。乾燥品ゆえの軽量さと、個包装が消費者に受けて大ヒット。すると翌シーズンから各社から個包装の濃縮タイプ(スティック、ポーション容器、小袋など)が発売された。1個(本)なら1人鍋用だが、実際はほとんどが3~8個入りで大人数にも対応している。
個包装タイプの昨シーズンで15%程度、今シーズンは20%に達する可能性もある。その大きな要因は、各社の工夫によりおいしさを確保したうえで、軽量ということが最も大きい。パウチの鍋つゆを購入すればそれだけで800g以上となる。飲料・牛乳など重量物を購入するとなるとつらい人もいる。
また、人数や食べる量、〆の有無に合わせて使う量を調節できるのもうれしい。PET・瓶も調節可能だが、空PETの処理などがあって個包装に移行した。これまで、鍋は家族団らんの象徴でもあったが、単身世帯や2人世帯など少人数世帯が増加、食の好みも多様化していることから、1人鍋(または2人鍋)が市民権を得たメニューに成長してきた。1~2人用の少人数用の生鮮・肉類・魚介セットなど小売り側の工夫もある。まさに新たな需要創造である。
その一方で鍋つゆはPB化が進み、寄せ鍋やキムチなどレギュラー的なフレーバーの4人用ストレートタイプはPBに占められる傾向がある。売り場を確保するにはPBではまだ少ない個食・少人数対応や、技術による軽量化が必要というメーカー側の判断もあるようだ。「鍋つゆ」の価値を維持するには、大手量販店側にも一般フレーバーのPBと、メーカー側の個食・少人数対応タイプ、あるいはメーカー独自のだし、フレーバーとの棲み分けが必要だという考えが求められる。急成長したが、廉価版の出現で縮小した春雨スープの二の轍を踏まないようにしたい。