【新年大豆油脂特集】
◎価値に応じた評価を得られる年に
○2016年はFAO「国際マメ年」
○豆類は人口問題・健康問題解決の切り札
豆類とは乾燥エンドウ豆、ヒヨコ豆、レンズ豆などマメ科の食用作物のことをいうが、それに一般的には油糧種子とされることの多い、大豆やラッカセイも含めてよいだろう。思えば豆類は、良い意味で地味な存在だ。例えば、日本における米は生育や収穫動向がニュースになるが、豆類でそういうことはほとんど無く、世間的注目を集める存在ではあまりない。ただ、日本の豆腐、納豆、みそ、しょうゆ、煮豆といった大豆加工食品をはじめ、世界各国の伝統的で日常的な食事には、必ず豆料理が含まれている。これは豆類が、人類にとって古代からの重要な作物であり、長きにわたり食を支え続けてきた証と言えよう。あまりに身近すぎるので話題にはならないが、日常的に食卓で欠かすことはできない。豆類とはそういう存在ではないだろうか。
国連食糧農業機関(FAO)は2016年を「国際マメ年」とすることを昨年宣言した。今年一年、豆類が持つ多くの利点について啓発すると共に、生産量・貿易量の拡大や、新たな用途による消費拡大に取り組む方針を示している。
これに合わせて、日本・米国・カナダなど18の豆類関連の全国団体などが加盟する、国際豆連盟(GPC、本部・ドバイ)では、民間企業などと協力し、地球環境や食料安保、人の健康の観点から豆類の生産・貿易の促進と、消費拡大に向けた情報発信などに一層取り組むとしている。
FAOは「国際マメ年」の趣旨として、豆類は安価でおいしく、栄養価の高いたん白質と必須の微量栄養素(アミノ酸、ビタミンBなど)を含んでおり、人々の健康や生活に大いに恩恵をもたらしていることや、アジアや南北アメリカでは食料安保の観点に加え、(乾燥地や寒冷地でも育ち、輪作体系を維持する上で重要なことなどから)小規模農家の経営や地域の伝統的な食事にとって重要なことを挙げている。
他方で豆類の栄養価値は一般的にあまり認識されておらず、過小評価されがちなことから、「国際マメ年」の取り組みを通じて、その価値の啓発と、生産量・貿易量の拡大を図りたいとしている。
豆類は、作物としても食料としても、その長所は数多い。人口問題や食料安保問題、生活習慣病・肥満に由来する健康問題など、数多の難問を抱える人類にとって、豆類は言わば、問題解決の切り札的存在と言えよう。「国際マメ年」の取り組みを通じて豆類が、その実力と価値に応じた評価がなされることを期待したい。
昨年の大豆・油脂業界は、家庭用油市場でオメガ3・ヘルシー系油脂が脚光を浴びたり、豆腐ではレンジ調理の簡便即食商品、納豆はフレーバー系商品が売場を確立、さらに豆乳市場の拡大が続くなど、明るい材料が多くみられた。一方で、円安などによるコストアップ分を製品価格に十分転嫁することができず、収益面では大きな課題を残した。
その意味で2016年は、昨年来の明るい材料を最大限活用すると共に、豆類と同様に、改めて製品価値に応じた正当な評価を得るための施策に努めたい。