おさかなサブスク「one bite fish」、冷凍鮮魚を宅配、漁業者の新たな収益に 旬の魚の安定確保や低利用魚の活用にメリット
冷凍鮮魚の定期宅配サービス「one bite fish」。長崎県内でスーパーを展開するジョイフルサンアルファや伊藤忠インタラクティブ、長崎県らが一丸となって立ち上げた。
テクニカンの「凍眠」を活用して鮮度の高い刺身を提供できるようにした。長崎県は国内でもトップクラスの魚種があり、毎月さまざまな魚を提供できるという。この取り組みを通じて、漁業関係者の収益増やフードロス削減などにつなげていく。
プロジェクトのきっかけは、伊藤忠テクノロジーソリューションが運営する、地域課題や新規事業の創出に向けた取り組みを行っている「Innovation Space DEJIMA」に、長崎市が「漁業者の所得アップ」という課題を持ち込んだことがきっかけだ。
長崎県の水産業は「魚の価格の低迷」や「漁業者の所得減」「漁業者の減少」といった課題を抱えていた。魚の需要減少なども追い打ちをかけていた。一方、長崎県は約300種の魚種を持ち、漁獲量は日本で3位という有数の漁場で、珍しい魚も多かった。それを活かした水産振興政策として検討を進めたという。
そこで、さまざまな企業と話し合い、地場企業のジョイフルサンアルファが加工や運営を担い、伊藤忠インタラクティブでブランディングやデザインを担当している。他にもデザイン会社や地銀、長崎県、長崎市らも運営に携わっている。
最初の実験販売は2021年2月に開始した。都内のモニター約30人に、毎月2回、全6回の配送で、月額は2万1,600円と高価だった。プロジェクトの主要メンバーの一人、伊藤忠インタラクティブの松本純一氏は「都内であれば需要があると考えていた。しかし、実際には高価、刺身以外も欲しいなどの声があった」と振り返る。次の実験では値ごろなコースを設け、需要の有無を確認した。
現在は6種の魚を月額5,000円(税込・送料別)で、定番2種と月替わり4種の魚を届ける。銀座松屋でも単品での販売を開始した。
商品を真空パックにしてマイナス30度のアルコールで凍結させている。細胞を壊さずに獲れたての状態を保てる。また、十分な冷凍によってアニサキスを死滅させられるという。刺身としてだけでなく、他の魚料理に活用できるよう商品は小分けになっている。また、凍結加工によって旬の魚の安定確保や、漁獲量が少なく商流に入りづらい魚を定期的に届けられるようにもなる。これまでは廃棄してしまっていた魚を活用できるようになるため、フードロスの削減にもなる。漁業関係者にとっては安定的な収益の確保にもつなげられる。サスティナブルな漁業とサプライチェーンの実現を目指す。
松本氏によると「業務用としてだけでなく、海外からも声がかかっている」という。今後については「まずはサービスを知ってもらい、より多くの人に活用してもらえるようにしていく」と語った。
〈冷食日報2022年10月13日付〉