ニチレイフーズ、2022年米飯は高水準だった前年並み、チキンは下期で前年上回る/宮川執行役員家庭用事業部長インタビュー
――当上期の家庭用冷食の市場環境について
上期の家庭用マーケットは前年比約1%増だった。コロナ前の2019年比では20%を超えて伸長しており、市場は高止まりしている状況といえる。新型コロナウイルス感染症に対する行動制限が緩和され、人流の回復に伴い、内食需要の拡大が落ち着きを見せたが、コロナ禍で新たに冷食を使った方に利用を継続していただいているのだと思う。
――貴社の家庭用事業の上期業績について
市場並みの推移だった。 米飯は全体で前年並みだ。前年が高水準だったので評価できると思う。主力の「本格炒め炒飯」やピラフ類の堅調さをベースに、新商品として「黒醤油炒飯」や「にんにく炒飯」を発売して品揃えを強化したことが寄与した。
チキンは前年秋からコロナ影響によりタイ産の供給不安が続き、販促施策を打てない時期もあったが、今期は供給が回復している。上期としては前年並みの実績を残したが、下期は前年を上回るだろう。
「特から」がメインだが、今春から全国に販売エリアを拡大した「むねから」が、一般的な鶏もも肉のから揚げと比較して、カロリーと脂質を抑えられ、たんぱく質が豊富という訴求点が健康志向をとらえて底上げに貢献している。
特に好調だったのは「今川焼」を中心としたスナック類だ。前年比2桁の伸びだった。コロナ禍において在宅時の軽食、おやつとして利用が増えた。朝ドラの舞台が回転焼きの店だったことも追い風となり、需要が高止まりしている。
今川焼は今春、定番品に「抹茶クリーム」を追加した。春夏限定で「クリームチーズ(はちみつ入り)」を発売した。
季節限定商品は若年層の取り込みにも寄与しており、全体の底上げにつながったと考えている。
弁当は前年並みだ。家庭用調理冷食市場の2割前後を占めるカテゴリーなので、前年水準を維持できたことは大きい。 弁当売場に縮小傾向が見られる中で、メインの定番商品が売上げを支えているのは確かだが、新商品を投入して選択肢を広げることも重要だ。マンネリ化しない売場づくりに貢献したい。
メーカーや流通は弁当、おかずとカテゴリーを分けているが、一般の生活者は弁当とおかずの区分けをそれほどしていないのではないかと見ている。弁当もおかずも価値を認めてもらえる商品が残っているということだと思う。
春の新商品も「冷やし中華」を中心に売り上げに寄与した。
凍菜は上期、海上輸送の混乱の影響が大きかった。主力のブロッコリーは一時休売する状況もあったが、物流は回復してきているので、下期はしっかり販売していきたい。
――今春の値上げの影響について
売価に反映しているのは9月、10月に入ってからだと思うが、直後にはやはり若干の減速がある。足元であらゆるものが値上がりしているなか、アイテムによって濃淡はあるものの、徐々に回復しているように見える。
為替影響や原材料・動燃費の高騰など自助努力によるコスト吸収の限度を超えている状況にあることは理解いただいているのだと思う。ただ販売動向には注視していく必要がある。いずれにしても価格に見合う価値を届けることが重要と考えている。
〈パーソナルユースで市場活性化〉
――下期の展望について
重点施策はこれまで通り「力強いカテゴリー政策の推進」と「新規需要創造への挑戦」の2本柱で進めていく。
前者において、米飯では「本格炒め炒飯」、チキンは「特から」「たれづけ唐揚げ」に加え「むねから」にも注力する。 後者について、価格改定を実施している状況では、新しい価値を届けることがまさに必要だ。拡大するパーソナルユース需要に対して、商品を投入し市場活性化を図る。
女性や高齢者の就業率が高まっており、食の外部化は進展している。世帯の少人数化はもちろん、コロナ禍において家庭内でも食べる時間やメニューが異なる状況が顕著となっており、パーソナルユース需要はさらに高まってくると見ている。
個食麺の第3弾として「カレーうどん」を2023年1月に発売する。山形工場にはカレー作りのノウハウがあり、風味にもこだわっているが、レンジ調理品であるのが大きな特徴だ。カレーは鍋や食器を洗う負担も大きい。新しい価値を提供できるのではないかと思う。
「冷やし中華」は秋発売の「極太つけ麺」と切り替えて終売したが、「カレーうどん」発売後も、つけ麺は定番として販売していく。カレーうどんも需要期は冬だが、通年販売も検討していきたい。
「極太つけ麺」の配荷は想定通り進んだ。回転は「冷やし中華」には及ばないが、レンジだけで調理が完結する商品はほかになく、評価は高い。
米飯、チキンに続き、食肉カテゴリーとして、今秋は「極上ハンバーグ」を発売した。パーソナルユース需要に対して、個食パッケージとなっている。レンジ調理に加えてボイルにも対応しているので、家族皆さんでも食べてもらえる仕様にしている。
流通からも品質を評価されて目標通りの配荷を獲得できた。高めの価格帯に見合った美味しさや利便性など、付加価値を認めていただける商品として回転を上げていきたい。
――米飯の新工場について
福岡のキューレイに米飯の新工場を建設する。2023年4月に稼働を予定している。米飯が2工場体制となることに加えて、新工場には大きい具材を投入出来るラインを導入する。ここでも新しい価値を提供できると思う。
〈冷食日報2022年12月27日付〉