【未踏のマーケティング】ひかり味噌 アンバサダー募りファン作り、消費者の生の声から気づき多くモチベーションも向上/林恭子取締役コーポレートマーケティング本部長インタビュー
もっとひかり味噌を知ってもらいたい──みそ業界3位の大手みそメーカーだが、量販店やコンビニなどのプライベートブランド(PB)商品の販売をメインに行ってきたことから、企業名の認知度がもう一つ浸透していない面があった。ここ最近では自社ブランド製品のブランディングや商品開発にも力を注ぎ始め、「みその初物」を味わうというコンセプトの天然醸造みそ「味噌ヌーボー 初熟(はつなり)」を2021年に発売した。同製品はその年の天候や原料の状態によって、年ごとに違う味わいを楽しめる。2年目となる昨年も好評を得た。
即席みそ汁の「味噌屋のまかないみそ汁」シリーズも、だしをあえて入れず、熟成されたみその味を存分に楽しんでもらうための大胆な企画だ。最後にかつおぶしをパラッとひとふりしてから飲むというスタイルを提案し、これまでにないスピードで小売店への導入が進んだ。
2022年秋に新発売した「CRAFT MISO 生糀」も国産米100%の糀をたっぷり使い甘味を最大限に引き出すことで、フレッシュでフルーティな味わいとジューシーな食感を実現し、業界に新たな風を吹き込んだ。
これまでになかったひかり味噌の一面を見せ始めた裏には、林恭子取締役コーポレートマーケティング部長の存在がある。3年前に飲料メーカーから転職してきた林取締役は、2年前にアンバサダープログラムを立ち上げ、ひかり味噌のファン獲得に動く。
「メーカーからの広告ではなくて、ファンからひかり味噌の情報を発信してもらうことを試みた。月1回で投稿キャンペーン、2、3カ月に1回の間隔でオンラインイベントを開催している。オンラインイベントにはマーケティングだけでなく、開発、営業、生産など、各部署の社員も呼んでいる。普段、直接聞く機会のない、消費者の生の意見には気づきが多い。また、社員のモチベーションも上がるので、とてもいい環境が生まれる」と林取締役は述べる。
〈「フレーバーホイール」で、みそを表現豊かに楽しむ〉
アンバサダーの人数は昨年2000人を超え、アンバサダー同士でコミュニケーションが図れるプラットフォームとして、インスタグラムの専用アカウントを立ち上げた。レシピやみその豆知識をアンバサダー間でも共有してもらうことで、さらに、このコミュニティが活性化すればいいと同社は考えているようだ。将来的には、アンバサダーも加わった商品開発にもチャレンジしてみたいという。
ひかり味噌では、みその特徴を体系化した「フレーバーホイール」をリリースした。「みそを表す言葉が少ない。みその良し悪しだけではなく、もっとみそを嗜好品として扱ってほしいと願っている。『CRAFT MISO 生糀』ではフルーティという言葉をみそで初めて使った。みそにもいろいろなタイプがある。語彙を増やして、みそを表現することができれば、商談や消費者間でのコミュニケーションでも今まで以上に楽しんでもらえる」とし、みその良さをこれまで以上に表現することで、需要拡大の糸口にしたい考えを示した。
〈大豆油糧日報2023年1月10日付〉