不二製油“社会課題解決型”の取り組み実行、「当社にしかできないことを追求」/大森達司社長インタビュー

不二製油・大森達司社長
不二製油・大森達司社長

――2022年を振り返って

調達環境、市場ともに厳しい1年だった。ロシア・ウクライナ情勢では、ひまわり油が一時影響を受けた。2021年から続く大豆、パーム油をはじめとする原材料高騰に加えて、為替の円安進行、エネルギーコストの高騰など、あらゆるコストが上昇した。2022年も価格改定を行い、適正価格をお願いしてきたが、100%の転嫁は難しかった。

市場を見ると、2020年、2021年は巣ごもり需要があり、大袋のチョコレートやスナック菓子、洋菓子店も生菓子が好調だったが、2022年は様子が変わった。また、コスト高を受けてBtoC企業が量目ダウン・値上げを行い、消費者の財布の紐が固くなったと感じた。

――2023年の見通しを

2023年度の上期のコストは、2022年度下期のコストに対して下がらない見込み。原材料では海外乳製品の価格が高騰し、エネルギーコストの大幅な上昇、為替の影響を踏まえると、引き続き適正な価格をお願いせざるをえない状況だ。

――インフレの中で、いかに持続的な成長を図るか

コストダウンに取り組むとともに、当社が目指している「社会課題解決型」の取り組みを実行していく。

一般消費者、顧客、社会の課題解決に寄与したい。社会の課題では、健康寿命の延伸への提案や、地球環境にやさしいサステナブルな製品の提案に注力している。課題解決の一助になることが付加価値にもつながる。逆に、付加価値が感じられないものは、課題解決の使命が終わった、課題解決していない結果だと認識し、真摯に受け止めていく。

課題解決の一助となる製品、ソリューションを提供することが使命であり、当社にしかできないことを追求する。

〈「GOODNOON」をフラッグシップに、おいしいPBFを発信、PBF調味料の専門部署も〉

――2023年の重点課題は

グループのサステナブル原料調達方針・目標のもと、取り組みを推進する。油脂は、RSPO認証(マスバランス方式)パーム油が増えており、引き続き注力する。

チョコレートにおいては、独自のカカオ豆購入による支援プログラム「サステナブル・オリジン」を適用したピュアチョコレートの販売を2022年6月から始めた。カカオの生産地が抱える課題について発信し、取り組みを拡大していきたい。「サステナブル・オリジン」のマークをチョコレート製品につけて販売する活動も広げたい。

大豆については、2025年までに、第一次集荷場所までのトレーサビリティ100%を目標に定めている。購入しているIPハンドリングされた原料はトレーサビリティに対応できている。加えてRTRS(責任ある大豆生産のための円卓会議)の加盟や、アメリカ大豆協会のSSAP認証品の調達などにより、必要な情報や知見を得るようにする。

各事業の重点課題では、植物性油脂はCBE(チョコレート用油脂)のトップシェアを維持したい。また、高齢化社会における社会課題解決の一つとして、安定化DHA・EPA含有油脂に引き続き注力する。DHAの継続的な摂取が健常高齢者の記憶機能を維持増進することを示し、日本農芸化学会の「2022年度農芸化学技術賞」を受賞した。拡大していきたい。

2022年7月に発表した、おいしさを追求したプラントベースフード(PBF)「GOODNOON(グッドヌーン)」の展開では、乳原料不使用のホワイトチョコレートなどを、話題性を含めてPRしていきたい。

乳化・発酵素材では、豆乳クリームバター「ソイレブール」が順調に推移しており、引き続き注力する。また、輸入チーズが高騰しており、植物性チーズにも力を入れる。

大豆ミートは2017年から市場が伸び続けているが、2022年度は伸びが鈍化した。(食品値上げの中で)例年に比べ新製品が少なく、量目をダウンした顧客もあるようだ。だが、大豆ミートの開発依頼は衰えておらず、案件を多数いただいている。まだまだ伸びると考えている。

新製法で作った大豆ミート「プライムソイミート」を2022年発売した。従来の製法では難しかった、肉特有の繊維感とジューシーなくちどけを実現したもので、販売に力を入れる。ホテルニューオータニ東京のビュッフェで「プライムソイミート」を使ったメニューが好評と聞いている。おいしさを追求していけば大豆ミートはまだまだ伸びる。来期からはPBF調味料を本格的に取り組み、事業化していきたい。

――PBF調味料の事業化について詳しく

一風堂と当社が共同開発し、2021年に期間限定で販売された植物性ラーメン「プラントベース赤丸」からスタートした。植物性で豚骨スープのような風味やコクを再現できた。一風堂の「ルミネエスト新宿店」でこれを使った植物性ラーメンを常時販売している。

当社は、植物性素材だけでビーフ、ポークなどの動物由来のだし、エキスを再現できる。和食に使うだしにも注目し技術開発を進めている。複数の日本料理の有名店の方から、「原料がサステナブルでなくなってきている」との話があり、試作品を見ていただいた。味の評価は良く可能性を感じている。

PBF調味料を新しいジャンルとして本格的に取り組むため、専門の部署をつくる予定だ。開発のスピードアップを図りたい。

――「GOODNOON」の進捗を

PBFを植物性油脂、業務用チョコレートに次ぐ第3の柱にすることが、食を取り巻く環境変化に事業で貢献し、当社グループの新しい成長をけん引すると考えている。グループの2030年ビジョンを達成するための活動を牽引するフラッグシップとして、「GOODNOON」を立ち上げ、社内の浸透を進めている。

これからはサステナブルな原料を使ったおいしいPBFに「GOODNOON」というブランドをつけて、外へ出していくことも考えていきたい。「GOODNOON」の要件に合う製品は新製品だけでなく、既存品にもある。ソイレブールはその代表格だ。PBFの普及のカギはおいしさだと考えている。油脂、たん白、乳化発酵など、当社が培ってきた技術を融合することで、頭ではなく、本能で心から食べたくなるPBFを出していきたい。

〈大豆油糧日報2023年1月19日付〉

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創刊:
昭和33年(1958年)1月
発行:
昭和33年(1958年)1月
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