ハイヤーリムジンから食品事業へ 長野・いつもこころは太陽と「郷土のお味噌汁缶」に引き合い、千曲川氾濫が開発の原点に
東京で一般旅客に対してハイヤーリムジンの運送事業を経営していた、いつもこころは太陽と(長野市)の弓田望社長は今、一杯のみそ汁を缶詰にした商品で、みその新たな価値を提案し、食品メーカーだけでなく、貿易関係や健康食品メーカーなどから、問い合わせが相次いでいる。
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防災食として開発された商品だが、カラフルなパッケージに加え、みそや具材にこだわったみそ汁を缶詰にしていることから、お土産としての需要も高く評価されている。また、みそ汁を缶詰にするというノウハウに関心を持つ企業が存在することから、商品開発サポートもひとつの事業として展開していく考えだ。
弓田社長は東京から長野へ移住して、新たな事業を始めたが、知らない土地と新たなビジネスへの挑戦で、精神的に疲れていた頃に、たまたま入ったみそ蔵が経営する食事処で出されたみそ汁に感動。「涙がポロポロと流れ、体から湧き上がるものがあった」と弓田氏は振り返る。その体験をきっかけに、みそ汁を使った事業をやりたいという思いが強くなり、長野県のみそ蔵を回り、商品開発に取り組み始めた。
会社が走り出した矢先の2019年10月に千曲川の氾濫を体験し、この体験により、みそを使った商品の方向性が何となく形として見えてきた。
「炊き出し以外に何かサポートできないか。非常食のアレルギー問題や、心のケアなどの問題が残っている時に、一杯のみそ汁は心温められる。水害なので、缶詰だったら、泥まみれになっても、洗って食べられる。水がない、ガスがない状態でも、みそ汁があれば、すぐにミネラルが補給できる」と思いつき、1杯のみそ汁を缶詰にすることを思いついたという。
〈「郷土のお味噌汁缶」シリーズ始動、47都道府県のみそ汁を缶詰でお届けしたい〉
一方、みその蔵元とのやり取りの中で、弓田氏は、みその消費量が減少し、40年前に比べて消費量が半分以下になっていることを知る。
「みその業界をいろいろと調べていくと、このまま経営者が減っていくと、みそ業界が廃れてしまうと強烈に思った。みそをたくさん使ってもらう商品作りが今後は大事になってくることを知った」と危機感を募らせる。
初めは、全国のみそを缶詰に入れて、販売できたら、手軽にみそをより楽しめるのではないかと考えたが、パッケージングの仕方で難しさを痛感し、みそ汁そのものを缶詰に入れてしまう方向に転換した。
それでも、「鍋で作るのとは違い、食感も違い、味が整うまでに、相当時間がかかった。郷土のみそ汁には何が使われているのか。現地に行き、食材の仕入れを地元の農家と交渉して、課題を一つずつこなしていくことで、ようやく完成させることができた」と苦労した点を語る。
「日本の食卓 郷土のお味噌汁缶」シリーズには、「長野県の信州みそ」(1缶160g、600円税込)、「愛媛県の信州みそ」(160g550円税込)、「兵庫県の信州みそ」(160g600円税込)、「富山県の信州みそ」(160g550円税込)などがラインアップされている(価格は変更する可能性あり)。
パッケージのカラーリングはその土地にちなんだ色を配色しているのが特徴だ。「自分では買わないものとして、土産やお歳暮、お中元などに喜ばれるはず。防災用としての販売にも力を入れ、みそ市場の活性化の一助になりたい。日本の食文化の継承に少しでも貢献できれば」とし、国内では47都道府県のみそ汁を缶詰で発売することを目指す。また、今後は海外への販売にも力を入れ、みその健康機能性の高さとおいしさを世界中に広めていきたいと考えている。
〈大豆油糧日報2023年1月26日付〉