学校給食費 食材高騰でさらなる上昇懸念も、各地に広がる無償化の動き
学校給食費は1月27日に文科省が発表した「令和3年度学校給食実施状況等調査」によると、小学校が全国平均月額4,477円で対前回調査(平成30年度)上昇率は3.1%、中学校が5,121円で3.6%と増加しており、いずれも過去最高額となった。
この調査の実施期日は令和3年5月1日時点ゆえに、ウクライナ情勢や世界的なエネルギー費の高騰などを起因にする昨今の物価高騰が原因のものではない。そうした新たなコスト上昇は学校給食用食材についても例外ではなく、昨年から今年にかけてメーカーの値上げが相次いでいる。次年度の調査では更なる学校給食費の上昇が見込まれそうだ。
給食費の値上げが懸念されるなか、保護者の負担軽減に向けた取り組みが、全国の自治体で浸透してきている。文科省の調査によると、政府交付金の活用をはじめ学校給食費の負担軽減に向けた取り組みを「実施または予定している」自治体は昨年7月末時点で、8割以上に上った。文科省は自治体にこの状況を周知し、引き続き負担軽減の取り組みを促す考えだが、その一方で、昨年末から学校給食費の完全無償化をすすめる自治体が相次いでいる。東京都23区では、葛飾区や中央区に加えて、1月末には品川区や足立区でも無償化の方針が示された。学校給食無償化の動きを追った。
〈人口が多い都市部でも無償化がすすむ〉
学校給食費の完全無償化は従来、人口が少ない過疎地の市町村で、子育てに手厚いことをアピールするための施策として実施されてきた。しかしこの1年、人口が多い都市部の区や市でも給食費無償化をすすめる自治体が増えてきている。
千葉県市川市では、2023年1月から公立中学校と特別支援学校で、23年4月から小学校で給食費無償化を決定した。同市はこれまでも第三子以降の子どもの給食費を無償にしていたが、コロナ禍や物価高騰を背景に、対象を全ての子どもに広げ、支援を強化した。なお、千葉県では23年1月から、第三子以降の子どもの給食費を無償化する方針を固めている。同県によると、第三子以降の子どもの給食費無償化は都道府県単位では全国で初めてだという。市町村と費用を分担して、県内全域で始める考えだ。
〈子育て世帯の家計を圧迫する給食費とその支援〉
文科省の調査によると、2017年度時点で小・中学校ともに無償化を実施しているのは、1740自治体のうち76自治体と、全体の4.4%に過ぎなかった。
しかし、上記のように完全無償化をすすめる自治体は全国的に増えており、ある報道調査によると、2022年12月時点で約250自治体まで広がっているという。また、全ての子どもを対象にしなくても、半額補助、第三子から補助、中学生のみ補助など、一部を補助する自治体も多くみられる。
給食費の無償化には様々なメリットがある。先述した文科省の調査では、無償化による成果を児童生徒、保護者、学校・教職員、自治体のそれぞれで列挙しており、自治体においては、▽子育て支援の充実▽少子化対策、定住・転入の促進とともに、▽食材費高騰による経費増加の際、保護者との合意を経ず措置可能、と明記。
また、児童生徒においては、▽自治体(地域)への感謝の気持ちの涵養▽栄養バランスの良い食事の摂取や残食を減らす意識の向上▽給食費が未納・滞納であることに対する心理的負担の解消——の3点を挙げている。
〈葛飾区、保護者や子育て世帯から高評価、区のイメージも向上か〉
東京23区の中でも、給食費の補助を積極的に行っているのが葛飾区だ。同区の学校給食担当者は「物価高騰が叫ばれている今こそ、取り組むべきタイミングと考え実施に踏み切った」と無償化について語った。
財源の確保について聞くと、「行政運営はその時々で必要とされるものが違う。食材費高騰で学校給食現場が苦しんでいるから、今はここに力を入れるべきだと考えた。この予算を得るために、何か特定の予算を削っているというわけではない」と見解を述べた。
では、保護者や区民の反応はどうか。「小中学生のお子さんがいる保護者からはかなりの反響をいただいている。子育てがしやすい、教育環境が整っているといった区のイメージも向上するのではないか」と反響を語った。
食材高騰が留まる気配がない中、子どもにとってかけがえのない学校給食が、家計の負担として重くのしかかってきている。子育て世帯の家計負担を支援する自治体の動きは今後も活発化しそうだ。