代替肉工場の建設・計画が活発化、マイセン、DAIZ、エヌ・ディー・シーら
大豆ミートをはじめとした代替たん白市場は、世界的にも日本国内においても拡大傾向にある。
原料となる大豆たん白の需要増に応えるため、工場新設や設備増強はこの数年で行われてきたが、ここにきて新工場の建設、計画が活発化している。大豆ミートは参入が相次いだことで競争が激化し、2022年の市場の伸びは、それまでと比べて鈍化したとみられる。
ただ、ツナの代替商品のみならず、日本ハムやモスフードサービスが3月に大豆を使った代替魚の商品を投入したように、限りある水産資源を保護するSDGsの観点から、今後は魚を代替する商品も増えていく可能性もある。各社の工夫で大豆ミートのさらなる味の向上が実現すれば、今まで以上に大豆たん白の需要増が期待できるだろう。
亀田製菓のグループ会社であるマイセンファインフードは3月、鯖江市に代替肉を製造する新工場を建設した。農林水産省補助事業の補助金により約3億円を調達した。2025年度までの売上高は10億円を目標に掲げている。目標金額について同社では、「新工場で導入した国内初導入の食品製造機器による新商品の市場インパクトを勘案した」と説明する。
植物肉「ミラクルミート」を開発・製造するDAIZは、2024年夏の稼働を目指し、新工場の建設を計画している。生産キャパシティーは2万t規模と、既存の発芽・植物肉工場(熊本県上益城郡)の5倍となる見込みだ。DAIZは2022年9月に日清製粉グループ本社と資本業務提携を行っており、新工場建設にあたっては、日清製粉グループの日清エンジニアリングが有する食品工場建設の技術・ノウハウを活かしていく。併せて、日清製粉グループの技術や知見を活かした「ミラクルミート」の付加価値向上や研究開発などを協働で推進していく。
新工場は4万平方メートルの敷地に建設を予定しており、自動化も含めた最適なライン配置などで効率的な生産体制を確立した環境配慮型の工場を目指している。また、研究開発機能と生産機能を一体化させたマザー工場とすることで、生産拡大に加えてさらなる技術の高度化の進展とスピードアップを図るとしている。
老舗大豆ミートメーカーのエヌ・ディ・シーも愛知県に新工場の建設を予定している。現在の約3倍の生産量にあたる月産200t規模となる見込みだ。エヌ・ディ・シーでは、「成長の鍵を握る人材の管理職への登用と、生産性を高めるための機械設備に積極的な投資を行っていく予定」と今後の方向性を示す。
その一方で、ネクストミーツは2022年夏の稼働を目指し、新潟県長岡市に代替肉製造専用の自社工場「NEXT Factory」の新設を進めていたが、資材の高騰により進めることが難しいと判断し、白紙となった。今後新設に向けて再び動き出すかは未定だという。なお、現在は岩手県の工場に委託して生産を行っているとした。
〈トップシェアの不二製油、先行して2020年夏に新工場稼働〉
ここ数年単位では、先行して設備投資の動きがあった。大豆ミートの素材である粒状大豆たん白のトップシェアを誇る不二製油は、牛肉や豚肉、鶏肉といった肉の色調に合わせた異なる粒状大豆たん白を展開している。その需要増に対応するため、阪南工場(大阪府泉佐野市)に加えて、千葉工場(千葉市美浜区)内に新工場を2020年夏に稼働し、生産能力を増強した。
また、1988年に大豆ミートの製造・販売を開始したアジテック・ファインフーズ(岩手県釜石市)は、2018年2月に大豆ミート専用の新工場を稼働している。ユーザーの幅広いニーズに対応するため、乾燥大豆ミートが製造できる乾燥設備をはじめ、さまざまな設備を導入しており、少量多品種に対応できることが強みだ。需要増に対応するため、2021年11月には、乾燥大豆ミートを製造する機械のエクストルーダーを追加で1台導入した。それによって、同社の乾燥大豆ミートの生産能力は2倍に拡大している。
〈大豆油糧日報2023年4月21日付〉