家庭用食品油市場、5年連続で過去最大規模を更新見込み、価格改定による単価上昇
食用油の2022年度(2022年4月~2023年3月)における家庭用市場は、2018年度から5年連続で過去最高金額を更新する見込みだ。
2021年3月以降、汎用油(なたね油など)で6回(一部メーカーは7回)の価格改定が行われ、確実に店頭での販売価格は上昇した。日清オイリオグループの推計によると、金額ベースの家庭用市場は2022年4月から2023年2月までの時点で、前年同期比8.9%増の1,634億円で推移しており、2022年3月単月実績に現在の伸びを単純に加えれば、2022年度トータルで1824億円規模となる。少なくとも1700億円を超え、前年の1675億円を上回るのは確実とみられる。
市場拡大が続いている要因は、コロナ影響の長期化に伴う内食率の高まりに加え、汎用油の価格改定による単価上昇が大きく寄与したためだ。加えて汎用油では、健康系や低吸油を訴求した付加価値商品の構成比が高まったことも金額市場の拡大に貢献している。
2022年4月~2023年2月の実績は、食用油の拡大をけん引してきた油種のオリーブ油が約374億円でほぼ横ばい、内食需要が高まる中で味変用途も注目されたごま油は前年同期比1.5%減の約325億円で推移している。アマニ油やえごま油といったサプリ的オイルは1.5%減の約137億円に留まるが、これは内食率アップに伴う新規需要や情報番組での露出が一巡したためと捉えられている。こめ油はキャノーラ油の単価上昇で流通の販促が増えたこともあり、前年同期比27%増の約146億円と引き続き拡大している。
一方、物量面では、市場全体でコロナ初年で内食需要が大幅に高まった2020年度の市場拡大の反動と価格改定による露出の減少、買い上げ点数の減少から前年を下回っている。コロナ以前の2019年比でも下回ったもようだ。製油メーカーによると、汎用油の流通のチラシ点数は前年より微増となり下げ止まりが見られるものの、2019年比では4割減のままだという。「露出が減った分、手に取る機会が減少し、量的な部分は元には戻っていない」と分析する。
販促機会の減少だけが要因ではない。「物価高で全体的に生活者の財布の紐が固くなり、買い控えが起こっている。油の使い方も随分変わっている」(製油メーカー)とも指摘される。たとえば、少ない油で揚げ物をする揚げ焼きがメジャーになってきたことや、単価が上昇したオリーブ油は、大量に使うのではなく、パスタなどでも最後にひと回しして風味を出すような少量で済む工夫がされている可能性もあるとする。
付加価値油は2023年3月から、各社が価格改定を行った。その中でもオリーブ油は欧州の大干ばつの影響で、国際相場は昨年対比45%上昇している。最大産地のスペインの生産量は、ここ15年間の平均が約130万tのところ、前年比55%減の70万t前後になる見込みだ。製油メーカーからも、「コスト上昇が本格化するのはこれからだと思っている」、「産地の状況を見て、価格に転嫁していかないといけない」、「まだまだ価格改定を進めなければならないと思っている」と更なるコスト増に備える声が聞かれた。
〈業務用は長持ち油や機能性油脂の提案進める、GWの消費回復や5類移行は明るい兆し〉
日本フードサービス協会(JF)の外食産業市場動向調査を見ると、2022年4月~2023年2月の販売金額は各業態とも毎月前年を上回った。業態別では、特にテイクアウトが利用しやすいファストフードは好調で2019年比でも上回っているが、店内飲食が中心のファミリーレストラン、パブ・居酒屋は依然として2019年実績まで回復していない。その上で、「下期以降、油脂価格高騰に伴う想定以上の使用延長や揚げ物メニューの減少などにより、JFの発表する業種業態の数字ほど食用油は戻っていない」(製油メーカー)。
実際、日本油脂検査協会がまとめた2022年度の食用植物油JAS格付実績は、業務用は前年並みの34万9,427tとなったが、2019年比では14.2%減と2ケタ減となっている。
とはいえ、コロナ禍で各メーカーは長持ち機能を有する油をはじめ、作業改善や省力化につながる機能性油脂や風味油などの提案を進め、コスト高騰や人手不足に苦しむ外食ユーザーの大きな力となってきたのは確かだ。
JTBの旅行動向見通しでは、ゴールデンウィークの総国内旅行消費額は、ほぼコロナ禍前の状態に回復すると発表されている。新型コロナの感染症法上の位置付けが5月8日から5類に移行することもあり、業務用における食用油の需要の拡大へ、明るい兆しは見えている。
〈大豆油糧日報2023年4月26日付〉