冷凍弁当の支持拡大、勤労世帯などの需要伸長、ライフスタイルの変化なども影響

冷凍弁当イメージ
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冷凍食品の需要は依然として堅調に推移している。その中で、冷凍宅配弁当の需要も高まっているという。

自炊よりも高価だが、自分の時間を有効に使いたい、少しでも手間を減らしたいなどのニーズから、勤労世帯や主婦などから支持されているようだ。冷凍弁当のメーカーでは高齢世帯だけでなく、若者への訴求も強めている。

矢野経済研究所(東京都中野区)によると、2020年度の食品宅配市場は前年度比14.3%増の2兆4969億円で、2025年度には2020年度比17.4%増の2兆9321億円を見込む。関係者によれば、この中で冷凍の宅配弁当は規模としてまだ決して大きくはないものの、コロナ禍以降の市場ニーズの変化で成長すると見込んでいるようだ。

変化の1つは「フードデリバリー」の浸透だ。コロナ禍に支持を得たサービスので、コロナ禍中と比べて需要は落ち込んだと見られるが、一定の支持を得ている。

冷凍弁当「三ツ星ファーム」を手掛ける、イングリウッド(東京都渋谷区)の金澤裕之フードユニットマネージャーは「フードデリバリーを見ると、店舗で食べるよりも値段は倍近くするものもあるが、それでも引き合いはある。店舗まで買いに行くのが面倒だと感じる人が増えたのでは」と話す。

もう1つは「勤労世帯からの支持拡大」だ。コロナ禍の際は在宅勤務時に楽をするための食事として活用されるなど、積極的な利用ではなかったようだ。そこから需要が変化し、少しでも美味しい食事を楽に食べたい、高価でも自分の時間を確保するために食べたいなど、使われ方も移り変わっているようだ。

また、若年層をターゲットにした商品も多く登場した。2018年にサービスを開始した「nosh -ナッシュ-」がコロナ禍に大きく支持され、2021年5月時点の累計販売食数は1千万食だったが、2023年2月には5千万食まで伸びている。

イングリウッドが手掛ける「三ツ星ファーム」においても、幅広い年代から支持され、販売食数は2ケタ伸長を続け、定期利用の会員も増えているという。金澤氏は「正直なところ、コロナが落ち着いたら売上も落ち着くのではと予想していたが、今も着実に伸び続けている。サイトの利便性を高めるなど、より活用してもらえるサービスにしたい」と話す。

着実に伸長する冷凍弁当に目を付け、若い世代をターゲットにした商品の投入も目立つ。シルバーライフは、2023年3月に若年層向けの冷凍宅配弁当「ライフミール」を投入した。写真に映えることも意識し、色味だけでなく具材感にもこだわり、若年層を意識している。今後はインフルエンサーを起用したPRなども検討している。また、自社工場を活かし、OEM(委託生産)の強化も進めるようだ。

ファンデリーでは、旬の食材をすぐにメニュー化して届けるサービス「旬をすぐに」のリブランディングを2023年2月に行い、TVCMも放映するなど提案を強めている。働いている20~30代の需要が増えたため、親しみやすいブランドを目指して今回のリブランディングに踏み切っている。

経営企画室の髙橋茉央氏は「CMの第二弾も検討しているほか、SNSなどを通じてブランドを訴求していく。また、定期購入の場合、単品購入よりも送料が安くなるなどのメリットをアピールしたい」と語る。

他にも、ワタミでは冷凍惣菜を自宅に届けるサービス「ワタミの宅食ダイレクト」向けの惣菜を作る工場を新たに設置する。渡邉美樹会長兼社長は「冷凍の場合、OEMを活用していることが多く、委託先もほぼ同じなため味での差別化が難しい。新たに設置して味で差別化を図りたい」と述べている。

各社ともさまざまな形で提案を強めている中で、自社工場やOEMの強化で支持獲得を目指す企業もある。市場としてはまだ発展途上だが着実に広がりを見せる冷凍弁当。食事に対する意識の変化が今後の動向を左右するだろう。

媒体情報

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近年の冷凍食品をめぐる情勢は、共働き世帯の増加や家族構成の変化、また飲食店や量販店の惣菜売場の多様化によって需要が増加しています。一方で、家庭用冷凍食品の大幅値引セールの常態化はもとより、原料の安定的調達や商品の安全管理、環境問題への対応など課題は少なくありません。冷食日報ではこうした業界をめぐるメーカー、卸、そして量販店、外食・中食といった冷凍食品ユーザーの毎日の動きを分かりやすくお伝えします。

創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
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