J-オイルミルズ、CFPマーク取得の長持ち油「長徳キャノーラ油」で環境・労働低負荷を訴求
J-オイルミルズの2023年度の業務用方針について、油脂事業本部油脂事業統括部の柏原章人業務用事業部長は、おいしさを長持ちさせる特許製法「SUSTEC(サステック)」を採用した「長徳」シリーズを継続強化していくとする。
売上構成比の高いフライ油に関してはコスト抑制に加えて、コロナの5類移行で市場回復が期待できる外食、中食ユーザーに対し、販促の支援を行っていく。さらに、企業理念体系において目指すべき未来として掲げる「おいしさ×健康×低負荷」のうち、特に「低負荷」でユーザーの課題を解決できる商品を提供していくことが差別化のポイントになると強調する。
2021年度に引き続き、2022年度も取引各社にはやむを得ず価格改定をお願いする形となったため、ユーザーのコスト低減にもつながる長持ち油「長徳」を積極的に提案することで、販売数量が拡大した。色や酸価などユーザーごとに廃油交換の基準があることから、特許製法「サステック3」採用の「長徳」と「サステック4」採用の「すごい長徳」という「2つの武器で対応を継続していく」と述べる。
「長徳」はCFP(カーボンフットプリント/製品サイクルでの)マークの認証を業務用食用油で唯一取得している商品だ。「前期までは価格改定のお願いが営業活動の中心だったが、今期はCFPという価値の訴求を前面に押し進め、売上拡大につなげる」と語る。
※CFP=ライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガス(GHG)の排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組み。
取引先の担当者のみならず、経営層にも「長徳」の環境負荷抑制効果が評価され、採用に繋がる事例も増えているという。「生活者に近い流通企業各社はサステナビリティ(持続可能性)への意識が非常に高い。また、産業給食の経営層などからも環境を意識した食材が求められている。CFPマークを切り口に、新たな視点で営業活動を進めていきたい」とする。
柏原部長は「長徳」について、「長持ちするため油の交換頻度が減り、労働負荷を低減することで調理現場の人手不足の課題を解決するだけでなく、CO2を約2割削減するため環境にも負荷が低い商品だ。サステナビリティ意識の高い企業をターゲットとして設定し、2023年度は環境への低負荷を軸に販売を拡大していきたい」と力を込める。
また、J-オイルミルズが実施した生活者の意識調査の結果、総菜コーナーの揚げ物に使う油に求めるものとして「環境にやさしい油」を58%の人が挙げ4位になった(複数回答可)。「当店は、サクッとおいしい環境を考えた油で揚げています」とアピールするPOPなどの販促物を作成し、すでに総菜売場で掲示している店舗の事例も複数あるという。
CFP取得商品は「長徳キャノーラ油」に加えて、「長徳白絞油」「長徳サラダ油」「長徳ヘルシータイプ」の計4商品、斗缶や8kgBIB、4kgピローなど計9品目であり、ユーザーのニーズに適した商品を提案することが可能だ。
〈調味油・調理油でも環境の低負荷を提案、オリーブ油高騰で「キャノリーブ」強化〉
またJ-オイルミルズは、バターフレーバーオイルなどの調味油や、炊飯油などの調理油も多数そろえている。外食や中食の調理現場、加工食品の生産現場の低負荷という切り口でこれらを訴求している。
「生産現場や調理現場での労働低負荷から環境の低負荷まで概念を広げて、調味・調理油の商品を提案していく構想を温めていた。今年度から調味・調理油においても環境の低負荷の提案を押し進めていきたい」と述べる。例えばバターは牛乳から作られるが、牛のげっぷにはメタンガスが含まれ、飼育には水や穀物などの資源が必要となる。バターの代替として「バターオイルフレーバーオイル」を使用することで、環境への配慮が可能となる。
さらに、フードロスの観点からも環境への低負荷を提案していく。例えば、「ガーリックオイル」を使用すれば、調理工程を簡素化できるだけでなく、調理時のロスや食材を余らせるといったフードロスの削減にもつながる。
また炊飯油は米粒の釜離れがよくなり、炊飯釜の洗浄の際の生産現場の低負荷に貢献できる。「炊飯釜に付着したごはんが低減しコストダウンできる商品として提案していたが、同時に食べられる米を捨てないことで環境の低負荷につながるという新しい提案をプラスする」と説明する。
柏原部長は、「第六期中計の成長戦略の方針である、『低負荷を強みとした成長ドライバーとなる商品の育成/拡売』を業務用油脂事業がけん引していきたい」と意気込みを語る。
また、オリーブ油のコスト増を受けて、エキストラバージンオリーブ油とキャノーラ油をブレンドした「キャノリーブ」の提案を足元で強化している。専用の販促物も作って提案を進めていくが、「今後さらにオリーブ油のコストは上昇するとの予測もあるため、コスト抑制として本製品を提案する余地がある」とする。
〈大豆油糧日報2023年6月2日付〉