川西「豆腐さいの目カッター」認知度向上、現場の声に応え“パックフィルムカッター”で使いやすく/大賀美夏子社長に聞く
豆腐工場設備のトータルエンジニアリングを行う川西は、「豆腐さいの目カッター」を販売している。食品製造総合展「FOOMA」での出展をきっかけに近年、採用件数が増加した。
大賀美夏子社長は、「『さいの目カッター』自体は随分前から販売していたが、初めて出展した2019年頃から認知されるようになった」と理由を述べる。
「さいの目カッター」は、約3秒で豆腐1丁をさいの目状にカットする。刃を交換すれば最小11mmから、絹豆腐に限り10mmから対応できる。絹豆腐や木綿豆腐、焼き豆腐だけでなく、動物の血から作る柔らかい血豆腐、海外産の硬い豆腐、こんにゃくやゼリーなどにも使用可能だ。
通常、柔らかいものを切るのは難しいところ、ノコ刃を使うことで実現した。豆腐のサイズに合わせてオーダーメードも可能となっている。豆腐を知り尽くしている川西ならではの工夫だ。
栄養面から給食に豆腐を使いたくても、豆腐を切る労力を考えると採用しづらいという現場の声が聞かれることから、「まだ手で切っている人たちに届けたい」と話す。豆腐の消費拡大に寄与することで、豆腐店の利益増加にも貢献する。
2023年4月には、豆腐パックのフィルムを剥くのが大変だという現場の声に応え、「パックフィルムカッター」を開発した。「さいの目カッター」にオプションで付けることができ、その場合は約5秒に1丁切れる。現在は、絹豆腐以外でも使いやすくなるように改良中だ。
「豆腐を手で切っている現場に入れ、その分、他の工程に人を回して欲しい。だが、そのような現場に届けられていないと感じる」と課題を挙げる。
〈工場の無駄をなくし利益確保に貢献、「自分都合ではなく、お客様にとって良い提案を」〉
川西が注力しているのは、豆腐工場の無駄をなくす取り組みだ。例えば、排熱を回収し、ボイラーの水をあらかじめ温めることでエネルギー効率を上げる提案を行う。また、排水処理工程で発生する脱水汚泥は栄養を豊富に含むことから、肥料として活用できるよう乾燥機を案内しているという。
このような取り組みをする理由は、豆腐店の利益を少しでも確保したいとの思いからだ。「豆腐は安く、例えば少し光熱費が上がっただけで利益がなくなってしまう」と説明する。
大賀社長は「必要に根差した企業」を理想像に掲げる。「自分都合ではなく、お客様にとって良い提案をして、当社も儲かる状態が理想だ」と話す。そのため、社員にノルマを設けず、要望に100%応える方針を取っている。
「豆腐は、罪悪感なく美味しく食べられる魅力的な食材だ。近年、家庭内調理の機会が減っているので、『さいの目カッター』を使ってもらうことで、惣菜など買ってすぐ食べられるメニューを増やす一助になりたい」と話す。
〈大豆油糧日報2023年7月5日付〉