アサヒとキリンのライバル同士がタッグ、茨城4市の自治体とペットボトルの水平リサイクルで連携協定
アサヒ飲料とキリンビバレッジは7月4日、茨城県常総市、取手市、守谷市、つくばみらい市で構成する常総地方広域市町村圏事務組合(管理者 松丸修久守谷市長)とペットボトルの水平リサイクルに関する連携協定を締結した。
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この協定締結は、取手市にキリンビール取手工場、守谷市にアサヒビール茨城工場があることがきっかけとなったという。両社が共同で地方自治体と資源循環に関する連携協定を結ぶのは国内初となる。
今回の協定締結により、2024年4月から4市内で市民が分別した使用済みのペットボトル全量を、メカニカルリサイクル(物理的再生法)やケミカルリサイクル(化学的再生法)によりペットボトル原料に再生し、キリンビバレッジやアサヒ飲料のペットボトル商品に再利用する。これにより1年間で約400tのペットボトルが再利用される見込みという。
ペットボトルの水平リサイクルとは、回収された使用済みペットボトルをリサイクルPET樹脂に再原料化して新たなペットボトルをつくるもの。日本は2021年時点のペットボトルのリサイクル率が86%と世界でも非常に高い状況だ。しかし、水平リサイクル率は20.3%にとどまっている(PETボトルリサイクル推進協議会調べ)。
これまで多くのペットボトルはペットボトル以外の繊維や食品トレイなどにリサイクルされていた。ペットボトルを持続的にリサイクルするためには水平リサイクルの推進が重要なため、飲料大手2社が連携して取り組むことは、流通や生活者の関心を集めやすくなるので水平リサイクルの推進力になりそうだ。
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常総地方広域市町村圏事務組合とアサヒ飲料、キリンビバレッジは7月4日に常総環境センター(茨城県守谷市)で会見を開き、同事務組合管理者で守谷市長の松丸修久氏は、「組合はごみの収集を主たる事業としているが、リサイクル率をどう上げていくかを常に課題に感じていた。今回、両社からこのような申し出があったことは、有意義なことだと喜んでいる。市民の皆様にこの事業へ賛同していただき、リサイクル率が上がることを期待している」と語った。
アサヒ飲料の守谷弘幸常務取締役は、「若い方の環境意識は非常に高くなっている。今回の取り組みも高い評価をいただけるようにしていきたい。この地域でペットボトルの資源循環を進めることについて、キリン社と意見が一致していたので、ぜひ地域のために一緒に取り組もうということになった。世の中のお手本になれるよう、5~10年後の未来の生活者からも高く評価いただけるようにしっかり取り組みたい」と話した。
キリンビバレッジ執行役員の谷川浩二東日本統括本部長は、「ペットボトルは、軽くて丈夫であり、この20年間で出荷が1.5倍以上伸びている。だが、CO2の排出量は削減しているという非常に良い素材だ。単一素材なのでリサイクルしやすいことも特徴。ただ、残念なのは、汚れていたり、いろいろなものが混ざっていると、もう一度同じペットボトルに戻すのが難しくなる。アサヒ社と一緒に取り組むことで、市民の皆様にもご協力いただき、ペットボトルの資源を有効活用していきたい」と語った。
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キリンとアサヒが協力するのは今回が初めてではなく、これまでも非競争分野の領域では協業することもあった。アサヒ飲料の守谷常務は、「世の中にとっていいことについては、これまでも一緒のベクトルであればともに活動していこうと考えて取り組んできた」とする。
2018年6月からは、輸送能力向上を目的とし、仙台・北海道に向けて定期的な船舶輸送を始めた。また、同年9月からは神奈川エリアで自動販売機の修理業務について、アサヒが自販機の修理業務をキリンに委託した。現在は対象エリアを拡大している。
今回の常総地方広域市町村圏事務組合、アサヒ飲料、キリンビバレッジのペットボトル水平リサイクルに関する連携協定が実現したのは、アサヒとキリンそれぞれが常総地域に基幹工場を持っていることが大きい。そのため、今後も両社が他の地域などで協業を進めることは「現時点で具体的な予定はない。今後、機会があれば検討していく」(守谷常務)という。
ただ、常総地方の4市が一体になってペットボトル資源のリサイクルに取り組み、地域を代表する大手飲料メーカー2社が連携して活動を推進することはこれまでに例がなく、各地で取り組まれている水平リサイクルのモデルになることが期待されそうだ。