医食同源生薬研究財団、食料安保のシンポジウム「食料安保を医食同源から考える」開催、食料クライシス回避のための研究戦略・高タンパク米育種など
(公財)医食同源生薬研究財団(雜賀慶二名誉会長=東洋ライス(株)社長、米井嘉一代表理事=同志社大学生命医科学部教授)は7月13日、東京・世田谷の東京農業大学でシンポジウム「食料安保を医食同源から考える」を開催した。
同財団は2021年4月、東洋ライスによる出資を受けて設立。“医食同源の社会実装”を目標に掲げ、同協会独自の調査や研究、他研究の助成などを行っている。
シンポジウムは東農大による「稲・コメ・ごはん部会」が協賛。冒頭挨拶に登壇した江口文陽学長は「食と医は密接な関わりがあり、食べたものが腸から脳へシグナル的に伝わり、身体が反応を起こす。何かの食品を過剰に摂りすぎると、健康に影響を及ぼす可能性も出てくる。一方、現代は食料自給率の低下が課題のなか、国際情勢に目を向けると、この先当たり前に輸入していた食料が入ってこなくなる事態も起こり得る。食の過剰摂取と食料安保を同時に考えることは非常に意味のあることではないか」などと挨拶した。
シンポジウムでは、▽農林水産省農産局・佐藤夏人穀物課長、▽東農大・山本祐司教授▽医食同源生薬研究財団・米井代表が講演を行った。
佐藤課長はみどり戦略や食料・農業・農村基本法見直しなど食料安保に対する農水省の取り組みを紹介。米井代表は同財団の研究成果について発表した。
山本教授は「食料クライシス回避のための研究戦略」と題した講演を行った。国連は「2030年にはタンパク質の需要と供給のバランスが逆転するなどの、食料クライシスが起こる」と警鐘を鳴らしていることから、山本教授は「食料生産による環境負荷などの問題を解決するには、生産者と消費者の両者の行動変容が必要。消費行動では食事の半分を多品種の野菜や穀類にして肉類を控える“Planetary Health Diet”への転換が必要と言われている」と話す。
そこから現在、山本教授が育種を進める「高タンパク質イネ」を紹介した。育種方法は高タンパク質の野生イネと、アキヒカリ・ホシアオバなどの高タンパク質品種を交配し、高タンパク質種子の選抜を行うというものだ。
山本教授は本紙・米麦日報に対し「研究に対してよく『食味は大丈夫なのか?』という意見をいただくことがある。日本では低タンパク質ほど良食味とされているため、高タンパク質米=美味しくないというイメージがついてしまっている。『じゃあ高タンパク質米を食べたことがあるんですか?』と問いたいし、確かにタンパク質だけで見れば低いほうが美味しいだろうが、異なる観点で美味しさを見出せるかもしれない。こういった未知の領域の研究は、企業ではなかなか難しく、大学だからこそできることであり、イメージを覆せるような成果を挙げていきたい」と語った。
〈米麦日報2023年7月19日付〉