国内の水資源保全戦略を強化、21工場19流域で水の循環利用実現へ/日本コカ・コーラ、コカ・コーラボトラーズジャパン
日本コカ・コーラとコカ・コーラ ボトラーズジャパンは7月31日、丹波山村(山梨県)および八王子市(東京都)とそれぞれ協定を締結し、コカ・コーラ ボトラーズジャパン多摩工場(東京都東久留米市)周辺流域における持続可能な水資源の保全を推進すると発表した。この活動により、日本のコカ・コーラシステムでは最終製品を製造する全国21工場周辺の19流域全てで、2024年末までに100%以上の水源涵養率を達成できる見込みという。
日本のコカ・コーラシステムは以前から、製造過程における「水使用量削減(リデュース)」、製造過程で使用する「水の循環(リサイクル)」、森林保全などを通じ製品に使用した水量を自然に還元する「水源涵養(リプレニッシュ)」に取り組んできた。
特に、水源涵養については、2016年に国内の水源涵養率100%を達成した後も、各工場と周辺流域における水資源保全活動などを継続したことにより、現在の水源涵養率は300%以上になっている。グローバルのコカ・コーラの中でも最も高いレベルという。だが、日本コカ・コーラ社広報・渉外&サスティナビリティー推進本部の田中美代子副社長は、同日に行われた発表会で、さらに水資源保護の活動を強化するとし、次のように語った。
「コカ・コーラは、水源涵養活動にかなり取り組んでいるという印象を持たれているかもしれない。しかし、ここで私たちはとどまるわけではなく、まだまだできることがあるのではないかということで社内で調査を進めてきた」。
「その結果、実はこの300%を平均とする水源涵養率は、工場によってばらつきがあることがわかった。中には水源涵養率が500%以上や1000%以上というところもあるなど、大変進んでる地域もあれば、まだ100%達成できていない地域もある」。
水源涵養率100%を達成できていないのは多摩工場となっている。同社では、「100%以上の涵養」に加え、節水、排水管理などをすべて徹底できていることを、水の「循環利用」と位置付けている。日本のコカ・コーラは、他工場も含め、すでに節水、排水管理などは十分に高いレベルにあるため、「あとは多摩工場の涵養率100%だけ」というのが現状だ。
そこで、国内全21工場・19流域で水の「循環利用」を目指し、多摩工場の流域で新たな取り組みを行うことになった。田中副社長は、「当社が製品に使用した水と同量、それ以上を自然に返していく。そして、21の工場全てで排水管理を徹底するとともに、節水や水の循環利用を完全に実施していく」とした。
ただ、多摩工場の水源涵養率100%を達成するのは簡単ではない。流域は東京都内がメインのため、地下水を浸透させる土地が少なく、川上における森林保全活動をするにも森林面積も限られ、また、既に他の用途で使われている森林が多い。
こうした課題を解決するため、コカ・コーラでは改めて多摩工場の流域を定義し、北は埼玉県、南は神奈川県、西は山梨県という1都3県にまたがる広大な流域を特定したという。その流域の中から、山梨県丹波山村と東京都八王子市の二つの地方自治体とパートナーシップを締結した。
丹波山村では、村有林の約80ヘクタールで間伐や歩道整備などの森林保全活動で地表に流出する水流を削減し、より多くの水を地下に浸透させることを目指す。木下喜人村長は、次のように話す。「水資源保全について、村民の意識をこれまで以上に強くし、森林整備活動を進めていくことが重要な責務だ。それが、より持続可能で、よりよい共通の未来を作ることにつながると考えている」。
八王子市では、「上川の里」特別緑地保全地区内で活動し、森林保全に加え、湿地の復元を目指す。これにより地下水への浸透水量を恒常的、長期的に行う。そして、水田の復元により淡水生物や植物など、生物の多様性にも貢献する考えだ。同市の平本博美環境部長は、「今回、コカ・コーラの両社との協定締結で強力なパートナーを得られた。将来に向けて、上川の里の自然環境を残し、より良い良好なものとしていくために、大きなお力をいただいたと考えている」とした。
今回の両自治体との協定締結は、2021年に米国ザ コカ・コーラ カンパニーが策定した「責任ある水の利活用と水資源保全のためのグローバルフレームワーク」に基づく新たな活動という。「OUR OPERATIONS(工場の運営)」「OUR WATERSHEDS(流域)」「OUR COMMUNITIES(地域社会)」の3つの観点で、持続可能な水資源の保全と活用を推進するもの。
今後、日本コカ・コーラならびにコカ・コーラボトラーズ ジャパンは、今回の2つの自治体と連携した水源涵養活動を通じ、2030年までの多摩工場の水源涵養率100%の達成を目指すほか、流域全体の健全化や生物多様性の保全にも取り組む。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン社の荷堂真紀執行役員は、次のように語る。「当社製品を消費者の方々に楽しんでいただくためには、水がなければこれは製品が成り立たない。水を長期にわたって持続的に確保することは、重要なビジネスのポイントだ。また、水資源を保っていくことが、私たちの社員や家族、地域の方々の健康を守る大きなポイントになる。すでに当社の全17工場合算の水源涵養率は目標を大幅に上回っている。今回の協定で水源涵養率はさらに上がり、300%を超える見込みだ」。
なお、同社は水資源の保全契約とは別に、各工場の周辺流域に位置する水源エリアで、社員や地域住民に自然や水の大切さや生物多様性の重要性を理解してもらうことを目的とした環境教育プログラム『コカ・コーラ森に学ぼう』プロジェクトを開催している。多摩工場周辺流域でも森林の保全整備や湿地復元など、水資源保全とともに生物多様性の保全に取り組む考えだ。