アサヒコ・池田未央代表取締役「伝統的な技術を磨きつつ、そこで培った技術を生かした新商品を開発する」/新社長就任インタビュー
「アサヒコはピカソと一緒だ」と、2023年5月に社長に就任した池田未央氏は話す。
続けて「ピカソは、デッサン力など基礎の技術をしっかり持ち、その上で自身の強みを磨いて後世に残る名画を幾つも描いた。アサヒコも同じだ」と説明する。
アサヒコが開発した「豆腐バー」は、発売開始した2020年11月からシリーズ累計で4300万本販売を突破した人気商品だ(2023年6月末時点)。池田氏は、豆腐業界を革新するような商品が生まれたのは、手揚げ売上日本一の「昔あげ」や、関東圏で売れている「大山阿夫利豆腐」のような、評価される商品を作る技術を磨いてきたからこそだと強調する。
「アサヒコが、当社の根幹である豆腐や油揚げ作りを止めることはない。むしろさらに磨きをかけていく。伝統的な技術を磨きつつ、そこで培った技術を生かし植物性たん白源としてユーザーや消費シーンを拡大する新商品を開発する。その両方を使いながら、豆腐市場全体の価値を上げていく。会社では自らが先頭に立ち、業界も先導していくような企業でありたい」と思いを語る。
〈プラントベースを一過性のブームで終わらせず、食習慣として根付かせる〉
3年後の目標として、日本の食文化に根差した健康的で持続可能な食習慣を作ることを挙げる。プラントベースを一過性のブームで終わらせず、食習慣として根付かせることが重要と語る。
米国では、たん白源の選択肢の中に、肉や魚だけでなく豆腐が当たり前にあるという。日本も同じような世界にすることが、アサヒコが提唱する「たんぱく質ダイバーシティ」のゴールと捉え、「植物性たん白質を美味しく手軽に摂取できる『TOFFU PROTEIN』シリーズでは前菜・副菜・主菜・主食・デザートまでフルコースを品揃え、お客様がお好きなものを選んで食生活に取り入れやすくしている」と食用頻度を高める施策を語った。
抱負について、「豆腐業界のゲーム・チェンジャーになることだ」と述べる。そのために、伝統的な食材という位置づけだった豆腐を植物性たん白源に定義を変更し、さらにSSAP(アメリカ大豆サステナビリティ認証プロトコル)認証大豆を使用し、自身の健康のみならず地球の健康(環境)への配慮も訴え、持続可能性な食生活が見直される流れを作り、ムーブメントを起こしていく。
すでにアサヒコの考えに賛同している企業も現れている。例えば、セブン&アイ・ホールディングスは、セブンプレミアムの「豆腐バー」に2023年3月から同マークを付与した。今後、アサヒコは他企業と協働し「この流れをさらに大きくしていく」と話す。
「安売り競争をしたら、その上流にある農家や資材メーカーの利益も減ってしまう。適切な価格で豆腐の価値を伝える必要がある。価格ありきでは持続可能な業界にはならない。廃れてしまう。新しいユーザーを取り込み、豆腐の価値を伝えていくことで業界の底上げを図る」と意気込む。
【池田未央代表取締役プロフィール】
(いけだ・みお)1995年に東京農業大学を卒業、三星食品に就職し、流通菓子の分野でヒット商品を出す。その後、そこで培ったことを他のカテゴリーでも発揮してみたいと思い、寿スピリッツに転職し、ヒット商品を出したが、2年で退職、それから1年間商品開発などのコンサル業に携わった。2016年にアンリ・シャルパンティエ(シュゼット)に入社、またしてもヒット商品を出した。2018年にアサヒコに入社した。
〈大豆油糧日報2023年8月4日付〉