Tastable、山中社長と料理研究家の浜内氏がプラントベースの可能性について対談、立ち位置と訴求するゾーンを定めて、日常的なものとして提案を
植物肉「NIKUVEGE(ニクべジ)」の開発・販売を行うTastable(テイスタブル、東京都中央区、山中昭浩社長)はこのほど、東京都中野区のファミリークッキングスクール・ラボで「NIKUVEGE」の消費者向けイベントを開いた。
当日は、インフルエンサー10人を招き、同スクールを主宰する料理研究家の浜内千波氏による市販用商品「NIKUVEGEそぼろ」を使ったメニュー5品(クスクスサラダ、太巻き、ドルマ:トルコ風トマトの肉詰め、かぼちゃの冷製ポタージュ、ワカモレ風アボガドのディップ)が披露された。
その後、日本での植物肉の可能性をテーマに座談会が開かれ、浜内氏は、プラントベース食品に関する日本と欧米との捉え方や食文化の違いなどを踏まえ、子どもや高齢者など訴求するゾーンを定め、日常的なものとして食べてもらうような形で展開することをアドバイスした。また、市場を拡大するためには買い求め易い価格帯も重要なポイントと指摘している。
山中社長は、日本のプラントベース市場は黎明期であり、いまは消費者においしいものだと認識してもらうため、おいしさを追求した商品開発と販売に注力しているとし、今後、「NIKUVEGE」が新しい食材として日々の家庭の食卓に並ぶことを目指していると理解を求めた。
浜内氏は、日本の今後の植物肉などプラントベース食品の市場展望について、「(ベジタリアンや環境問題への意識など)日本と海外では、代替肉などプラントベース食品に対する考え方や食文化など入口から異なっている。狩猟民族の欧米人が、地球環境を意識して動物性タンパクを取ることをやめる運動を起こしやすいかもしれないが、農耕民族の日本人はもともと豆腐など植物性タンパクを摂取してきた。日本と海外では市場が違うことをハッキリと明確にしたうえで、どのようなゾーンに提案すべきか見定めた方がよい」と指摘した。
さらに、今後の日本での市場の成長性について、「商品の価格帯によって今後の日本市場でのポジションが変わってくるのでは。どんなに優れた商品であっても、アッパーな価格帯であれば幅広く浸透させることは難しく、非日常的あるいはイベント的なものとして停滞してしまう可能性がある。商品の立ち位置を確立し、特定のゾーンにしっかりと提案をしていくべき」との見方を示した。
そのうえで、料理教室で使用した「NIKUVEGEそぼろ」について、「(昆布パウダーやマッシュルームエキスで)素材自体に和風の味付けがなされているため、メニューの発想がしやすい。和風の下味がついており、そぼろタイプのため簡便性も高く、育ち盛りの子どもたちや、年配の方に合うと思う。日本人に馴染みのある味付けで、さまざまな食材に合わせやすいという部分が、『NIKUVEGEそぼろ』の立ち位置であり、特定のゾーンとして子どもや高齢者の方などに提案してもよいのでは」とアドバイスした。
山中社長は、「NIKUVEGE」について「お肉が好きな人でも、おいしく食べることができるプラントベースミートを目指して開発した。将来的に、牛肉や豚肉、鶏肉、魚とは違った新しい食材として日々の食卓に並ぶことを目指している」とした。
また、「日本のプラントベース市場はまだまだ黎明期であり、現在は数多くのメーカーが多種多様なプラントベース食品を出しているが、同時に、あまりおいしくないものと捉えている人も多いと思う。買い求め易い価格帯も課題だが、いまはプラントベースミートがおいしいものであると消費者に認知してもらうため、『NIKUVEGE』は何よりも“おいしさ”に重きを置いて商品開発をしている」と説明した。
また、浜内氏は「今回はインフルエンサー向けの料理教室のため、少し非日常的なメニューにアレンジしたが、今後、学校給食や事業所給食をはじめ、日々の食卓で『NIKUVEGE』が親しまれるようになればと思う」とコメント。
山中社長は「プラスアルファとして食事のワクワク感も大切にしたい。もともと『NIKUVEGE』は、業務用からスタートしており、現在はそぼろ、ミンチ、ハンバーグなどのラインアップを展開している。今後も皆さんの意見を伺いながら、牛丼で使うような1枚肉タイプや、ブロック肉などの商品も開発していきたい」と展望を語った。
〈畜産日報2023年9月6日付〉