コカ・コーラボトラーズジャパン東由紀氏「中期経営計画達成に向け人財戦略を推進」/新執行役員就任インタビュー

コカ・コーラ ボトラーズジャパン 執行役員 最高人事責任者 兼 人事・総務本部長 東由紀氏
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 執行役員 最高人事責任者 兼 人事・総務本部長 東由紀氏

9月1日からコカ・コーラ ボトラーズジャパン 執行役員 最高人事責任者 兼 人事・総務本部長および、コカ・コーラ ボトラーズジャパンベネフィット株式会社 代表取締役社長に東由紀氏が就任した。東氏は、2020年2月に人財開発部長として入社し、採用、育成、評価制度など人財マネジメントを担当。その後、社長補佐を経験し、直近は人事・総務本部ピープル・エクスペリエンス&リレーション統括部長を務めた。

同社入社前は証券会社で金融関連業務にたずさわっていたが、「人」が協働する「カルチャー」の重要性を感じ2013年に人事にキャリアチェンジしたという。その後、野村證券でグローバル部門の人材開発、評価昇格制度、ダイバーシティ&インクルーションを統括、アクセンチュアで人材開発とLGBT施策アドバイザーを担当した。LGBTQアライを社会に増やす活動にも積極的だ。新職への就任にあたり、東さんに抱負などをきいた。

--執行役員最高人事責任者兼人事総務本部長に就任された感想は。

当社は8月に中期経営計画「Vision 2028」を発表しました。会社は一時期の非常に厳しい状態の中からトランスフォーメーション(変化)を進め、やっとその成長の基盤ができてきました。さらにここから成長させるという事業計画が出たタイミングでの就任なので、大役であり、ものすごく責任を感じています。

新しい中期経営計画を人事として何をすることで達成できるのか、しっかりサポートするための人財戦略を作り込もうと考えています。エキサイティングで、今後の人事の役割の大きさや活躍に期待しています。

「Vision 2028」では、サステナビリティーなどの取り組みとともに人的資本の経営を強化することが盛り込まれています。経営陣が中期経営計画を動かすのは人だと考えるためです。人事はここから何をするかを経営と一緒に作り込んでいきます。

--2020年の入社から実際に仕事をされてみて、どんな会社だと感じますか。

まず、当社に入社しようと思ったのは人財戦略を重要視していることが背景としてあります。多くの会社において人事は、ビジネスにおいて基盤といいつつ、少し端に置かれており、やって当たり前と思われる傾向にあります。その点、当社が打ち出すメッセージは、人が会社を作っていくのだから、ここに投資しなければ事業の成長はないというもので、そこに惹かれて入社しました。

ただ、統合から数年しか経っていなかったため、社員を育成し、パフォーマンスに応じて公正に評価し、それに応じた報酬制度を変えていくという仕組みがありませんでした。私はそれを作り込む活動をしてきましたが、その際も経営陣の考えの中心は人でした。人が会社の中心にあるということを本当に実現している会社だと思います。

--東さんは2013年から人事関連にキャリアチェンジされました。人事のやりがいはどこに感じますか。

働いていた外資系の証券会社が日系の証券会社に買収されました。当時の私はビジネス部門で、プロジェクトを率いる課長の立場でした。

いろいろな能力を持った方々が、いろいろなプロジェクトを進めていましたが、やはり価値観の違いやお互いの信頼感、同じゴールに向かって一緒に頑張っていこうという考え方がありませんでした。また、報酬の差や評価制度が統合されていなかったなど、人事的なひずみを現場で感じ、それが整わないと人はビジネスで手をつなぎながら、同じゴールに向かってチームワークで取り組むことができないことを経験しました。

そして、人事に携わるようになったのは、それまで金融系の仕事はビジネスを数字でみるという点は面白かったですが、人生の後半はこれまでの経験を生かし、人を中心に強化することでビジネスの成長に貢献しようと考えたのがきっかけです。人事のやりがいはそこにあると思います。経営戦略に人事戦略を結びつけることが人事の役目です。

--入社されてからの取り組みについて。

2017年に統合してから最初の人財戦略ができ、2020年に人財開発部長として入社した私は採用と育成と評価の3つの戦略の柱を任されました。ビジネスの状況も理解しながら一つ一つの施策を設計していきました。

そして、今後は人事で作り込む人財戦略の中の一つの取り組みとして、実は広報とのタッグを入れたいと考えています。人事は、社員のことを考えながらさまざま施策に取り組んでいますが、マーケティングがあまり上手でなく、その意義を社員に伝えきれていない。分かりやすく伝えるプロである広報とタッグを組んでメッセージを伝えていけば、人事施策はより効果が出ると思います。

--貴社はLGBTQ+施策が非常に進んでいるイメージです。どうですか。

基盤は揃ったと感じています。LGBTQフレンドリーであることを示すwork with Prideという団体が取り組まれている「PRIDE指標」に応募していますが、昨年はレインボー認定をとらせていただき表彰を受けました。施策は揃いましたので、社内でさらに周知を強化していきたいと考えております。現場レベルや工場、ディストリビューションセンター、ベンディングなど、毎日現場で働く人のところまでは浸透していません。

そのため、次のステップは今度の人財戦略の中に入れようと思っています。これはLGBTQだけでなく、ダイバーシティ全体に関わる施策です。ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンで、公平性とはどういうことなのか。その現場のマネージャーだけでなく、一般社員も含めてどういうマインドセット、考え方と行動が必要なのかその定義のプロモーションや浸透に取り組みます。

当社は、中途入社の方や多様な人財に対しても寛容なマインドセットを持つ人が多いです。それは、当社がボトラーとして統合を重ねてきたことも影響していると思います。変化に対応し、違う価値観の人たちと協力していくDNAが入っていると思っています。LGBTQの取り組みを進めても拒否反応はないと感じます。

--課題と今後取り組みたいことを教えてください。

課題はまだまだあります。これまでの人財戦略はどちらかというと基盤作りのフェーズでした。それは、統合後に約1万7000人規模の会社になり、それに応じて必要な人事施策を整える必要があったためです。現在は、さらなる成長に向け、「Vison 2028」の財務目標やビジネスプランを達成するため、人事の観点から新しい人財戦略を作ることがひとつの大きい課題になります。

また、ここまでに基盤は構築できましたので、これからは浸透させていくことが課題です。やはり現場では、いろいろな数値目標をもって活動し、さらにお客様との対面でやりとりすることもあります。そのような社員に、人事的にやらなくてはならないことを追加していくということでなく、より現場の社員が働きやすくなる、よりウェルビーイングを感じられるとか、誇りを持てるようになるとか、お客様へ新しい提案ができるといったスキルを得るための研修などを用意しています。なぜ、この研修を受ける必要があるかのプロモーションも大切なので広報とも連携したいです。

例えば、ダイバーシティを正しく学ぶことで、現場で多様な力を活用しながら、より良いビジネスパフォーマンスが発揮でき、サービスをお客様に提供できるということなどを、広報とタッグを組みながら進めていきたいと思います。

新しい体制になり、本来私たちは何を目指し、どうありたいかという将来像を明確にすることに取り組んでいます。そして、現在とのギャップは、人の数なのか、ケイパビリティなのか、体制や戦略なのかを考えています。これは、私がやるというより、みんなでやることです。私は方向性を見せた上でその場を作ることが大事だと思います。

私の役割としては、関わる人たちをつなげ、つなげる場を作り、そのための時間を創出するためのプライオリティをつけることです。そのために必要な人財を採用し、育成することが私は人事の仕事で一番面白いと思っています。

媒体情報

食品産業新聞

時代をリードする食品の総合紙

食品産業新聞

食品・食料に関する事件、事故が発生するたびに、消費者の食品及び食品業界に対する安心・安全への関心が高っています。また、日本の人口減少が現実のものとなる一方、食品企業や食料制度のグローバル化は急ピッチで進んでいます。さらに環境問題は食料の生産、流通、加工、消費に密接に関連していくことでしょう。食品産業新聞ではこうした日々変化する食品業界の動きや、業界が直面する問題をタイムリーに取り上げ、詳細に報道するとともに、解説、提言を行っております。

創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
体裁:
ブランケット版 8~16ページ
主な読者:
食品メーカー、食品卸、食品量販店(スーパー、コンビニエンスストアなど)、商社、外食、行政機関など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送
購読料:
3ヵ月=本体価格12,000円+税6ヵ月=本体価格23,000円+税1年=本体価格44,000円+税