「和牛肉需要拡大緊急対策事業」の実施要綱が施行、参加事業者の公募を開始
〈新規需要開拓支援事業は、フルセットとロインの2本立てで支援〉
農水省および農畜産業振興機構(ALIC)はこのほど、2023年度補正予算で措置した「和牛肉需要拡大緊急対策事業」(予算額50億円)の実施要綱を固め、12月1日に施行した。同事業のうち、和牛肉の新規需要開拓を支援する「和牛肉新規需要開拓支援緊急対策事業」は〈1〉フルセット販売拡大事業〈2〉ロイン新規需要開拓事業――の2つの柱により、食肉事業者による需要開拓を支援する。〈1〉では枝肉・フルセット1頭当たりA5等級で15万円、A4等級で9万円、〈2〉はロイン1kg当たり1,600円の奨励金が交付される。
同新事業は、物価高騰に伴う和牛肉需要の減退に対して、緊急的かつ強力に需要を喚起し、需給を改善することを目的としている。今年度に実施されている「和牛肉需要開拓支援緊急対策事業」(以下、現行事業)がすべて和牛肉の部分肉(ロイン、ロイン以外)単位による仕組みとなっているのに対して、新事業はフルセットとロインの2つの事業で需要開拓を支援することで、部位ごとの需給バランスの改善、高級部位の販路拡大の双方の事業効果をねらう。
事業の対象となる和牛肉は、23年3月1日以降にと畜された和牛(4品種およびそれらの交雑種)に由来し、フルセット販売拡大事業では23年12月1日から、ロイン新規需要開拓事業では計画承認後からいずれも25年度末(25年3月末)までに販売されるものとされる。ロイン新規需要開拓事業は「ヒレ」「リブロース」「サーロイン」の3部位とこれら部分肉を分割したものが要件となる(経産牛由来、ひき肉、端材を除く)。
事業参加を希望する事業者は、現行事業と同様に、計画書(フルセット販売拡大計画書、ロイン新規需要開拓計画書)を作成し、事業者団体へ提出する。今回は、1計画当たりの申請重量の範囲は、ロイン新規需要開拓事業についてのみ「0.1t以上」とされ、上限はない。一方、計画書の公募も現行事業は4回設けられたが、今回は両事業ともに原則1回とされている。
フルセット販売拡大事業の場合、計画書には、食肉事業者として枝肉・フルセットによる和牛肉の販売拡大に向けてどのような取組みを計画しているのか、その内容を記述する必要があるほか、新規または既存の“想定される販売先(実需者)”と予定している取組み内容などを記載する。そして、12月から25年3月末までの各月の販売予定頭数、格付別の販売予定頭数、金額などを記入したうえで「販売拡大奨励金」を算出して、事業者団体へ提出する。
ロイン新規需要開拓事業では、現行事業と同様、計画書には和牛肉の産地(枝肉またはフルセットによる仕入れ)から実需者への販売に至る一連の流れのほか、計画の取組みで期待できる効果(需要開拓、需要の定着性、新規性、産地との連携、独自性)、年間取組みスケジュールなどを記載する必要がある。
両事業ともに、事業者団体からの申請を通じて、最終的にALICで計画を承認する。注意が必要なのは、ロイン新規需要開拓事業は、現行事業と同様にALICが設置する第三者審査委員会で審査され、需要開拓効果が高いと認められた計画から予算の範囲内で承認されたうえで、計画に基づく販売がスタートされること。現行事業との混乱を避けるため、事業期間(取組みスケジュール)も24年4月から25年3月までとされている。なお、補助金の概算払いも可能となっている。
すでに農水省およびALICは今月8日に事業者団体に実施要綱の内容を説明している。フルセット販売拡大事業については、予算配分に向け各事業者団体を通じて要望調査を行っているところで、来年1月末までに取りまとめたうえで、計画書の申請をスタートさせる予定。ロイン新規需要開拓事業については、2月末まで計画書の公募を行い、委員会での審査を踏まえ4月には承認結果を事業者団体へ通知する運びとなっている。
一方、食肉事業者などによる和牛肉関連イベントなど、和牛肉の消費拡大・理解醸成の取組みを支援する「和牛肉消費拡大・理解醸成緊急対策事業」と、訪日外国人向けに和牛肉を提供する取組みなどを支援する「和牛肉インバウンド消費喚起支援事業」についても近く実施要綱が固まる方向だ。
〈畜産日報2023年12月22日付〉