イオン、イトーヨーカ堂、西友で値下げ、4月は大手スーパーで価格訴求発表、イオンは2023年度「トップバリュ」値下げも業績は好調、原料高、人件費高の中、スケールメリットや効率化を背景に実施
物価高騰が続く中、大手流通各社で「値下げ」や、増量による「実質値下げ」の価格訴求が展開されている。
【関連記事】イトーヨーカドー、食品71品目値下げ、「買い回り頻度の高い」品を選定、背景はヨークとの統合による効率化などで値下げ幅は2%から25%、2024年度は「セブン・ザ・プライス」強化で価格訴求
様々なものの値上げが行われる中で、消費者にとっては、収入の増加がなければ、節約志向になることは避けられない。こうした現状に対し、4月には「イオン トップバリュ」の期間限定での実質値下げ、「イトーヨーカ堂」の値下げと「セブン・ザ・プライス」注力、西友の「しあわせ価格500品目」の展開と、大手スーパーによる価格訴求の施策が発表された。
特に「イオン」では、2023年度に「トップバリュ88品目の値下げ」も行っており、なおかつ賃上げも実施した。一方で、業績は好調で、今期にも増収増益を見込む状況だ。
セブン&アイ・ホールディングスでは、不採算店の閉店や事業譲渡など、「構造改革」の施策を公表している。また、商品力の高い「セブン-イレブン」をグループに持つことから、グループ内でのシナジーを生かして「価格訴求」に対応した商品開発が期待できる。
大手各社であっても、物価高騰に逆らった「価格訴求」を恒久的に行うのは難しいと考えられるが、「賃上げ」「収入増」の環境下にある消費者ばかりでない中では、こうした「価格訴求」はありがたく、さらに集客力を高めていくだろう。
〈イオングループ、値下げ、価格据え置き増量、賃上げなど実施も増収増益の高成長、2024年度は10兆円目指す〉
イオンは、3月27日にプライベートブランド(PB)「トップバリュ」28品目の値下げを実施、2023年度は、第1弾31品目、第2弾29品目と合わせて「トップバリュ」の88品目を値下げした。当然イオンにとっても、原材料価格の高騰や人件費の高騰など、コスト圧力は強いと思われるが、背景は「配送形態の見直しやグループのスケールメリットを活用した」としている。
イオンでは、これら「トップバリュ」の値下げだけではなく、2023年11月6日から「厳選31品目を増量」、1月24日から「厳選24品目を増量」、4月5日から「厳選40品目を増量」を実施した。いずれも期間・数量限定での実施ではあるが、価格据え置きでの増量で実質値下げとなっている。
イオンは、価格訴求によるニュースだけではなく、賃上げの「満額妥結」も話題となった。原料高などのコストアップで苦しい中で、人件費のコストアップも受け入れたことになる。
一方で、4月10日に発表した2月期決算では、増収大幅増益となっており、売上や営業利益は過去最高となっている。今期計画は、インフレ、電気代上昇、物流の2024年問題、賃上げなどの影響と対策による効果を加味した上で、2024年2月期比で増収増益を予測、営業収益は10兆円としている。
イオングループのまいばすけっとでは、「トップバリュ」商品を充実させた実験店の運営を開始するなどPBを主力とする店舗の取組みも開始している。
◆カスミ
イオングループの首都圏のスーパー「カスミ」では、2月に「月間厳選100品値下げ」を発表、3月には「毎日!お買い得」「月間厳選 100品」POPのついた商品約1,000品を値下げすると発表している。
〈セブン&アイ・ホールディングス、「イトーヨーカ堂」価格訴求、構造改革で成長を目指す〉
セブン&アイ・ホールディングスのイトーヨーカ堂は4月1日から、「イトーヨーカドー」と「ヨーク」の店舗で、合計71品目の値下げを行った。値下げは、「イトーヨーカドーとヨークの統合によるオペレーション・販促・物流の効率化や、商品政策の統合による扱いアイテムの絞り込みが進んだことで実現した」としている。
合わせて、「求めやすい価格」のPB「セブン・ザ・プライス」の品揃え強化を進めることで、PBでも価格訴求を行う。
セブン&アイ・ホールディングスは、2023年に9月に傘下のスーパー、「イトーヨーカ堂」と「ヨーク」を経営統合した。また、井阪隆一社長は「イトーヨーカ堂」と「ヨークベニマル」を中心としたスーパーストア事業の株式上場を検討すると公表している。さらに、首都圏外と一部首都圏の不採算店を含む店舗の閉鎖、外部継承を決定しており、「構造改革」を実施した上で、再成長を目指していく方針だという。
〈西友、「しあわせ価格」4月3日から〉
西友は4月3日から、300アイテムの値下げを実施、200アイテムを「魅力的価格」で提供するとして、500アイテムの「しあわせ価格」の展開を開始した。
各アイテムの値下げは、期間限定ではあるものの、順次対象を入れ替えながら、年間を通じて継続的に「しあわせ価格」の展開を実施していくという。