グリーンスプーン、選ばれるサービスを目指してメニューなど拡充【冷凍宅配弁当の最前線:番外編】

グリーンスプーン、選ばれるサービスを目指してメニューなど拡充
グリーンスプーン、選ばれるサービスを目指してメニューなど拡充

野菜をふんだんに使った冷凍のおかず類やスープなどを展開しているGREEN SPOON(グリーンスプーン、東京都港区)。2020年からサブスクリプション(定期購入)サービスを手掛けており、社員自ら素材を選定し、商品開発に活かしているという。サービス開始時は最初の緊急事態宣言が発令される少し前だった。当時のEC市場は今よりも食品を売る事業者は少なかった。常務取締役の黒﨑廉COOにサービスの現状などを聞いた。

黒﨑常務
黒﨑常務

――現在の売上はいかがですか。

前年比300%ぐらいで伸びています。スムージーの販売から事業をスタートし、スープやサラダを出しました。2023年の6月におかずを投入してから、この1年はずっと伸びています。

――サービスの特徴など、お聞かせください。

私たちの会社のビジョンは、「自分を好きで生き続けられる人生を」。食をやりたかったメンバーで起業したというよりも、人生を豊かにしたい、人の心や自己肯定などにアプローチしたくて、それを食の分野で成そうとしているのがグリーンスプーンです。芸能人の方や飲食店さんとのコラボは、食生活を楽しくしたいという思いもあって取り組んでいます。

栄養を豊富に摂取できる、安くて簡単、ヘルシーなどの商品は多くのサブスクサービスから出ています。ただ、それだけでは続かないとも僕らは思っていて。ただレンジで温めるだけでは味気ない。グリーンスプーンは、あえてひと手間加えるなどの仕掛けをちりばめています。そのひとつが素材で届けて、それを料理にしてもらい食べてもらうことです。自分で料理をした時に近い感覚で食べていただけるのではと思っています。

最初に発売したスムージーも、ミキサーで調理しなければ食べられない設計にしていました。社内でも論争はあったのですが、自分のために調理するという実感が、僕らが目指しているビジョンを成すために必要だと思って、あえてひと手間をかけて作る商品にしました。今考えればやっぱり結構難しいことをやっていると思うんですけど、このスタイルを貫いてきたからこそ、求められるサービスになれたのではとも感じています。

健康な食生活が、ただ機能的にならないよう、色々な楽しいイベントを提供することが特徴でもあると思っています。グリーンスプーンを長く続けてくださっているお客様にインタビューすると、グリーンスプーンは野菜を摂るための手段になっていたんです。細かく脂質や食物繊維などを計算する方もいますが、多くの方の場合、そこまで細かくはしないと思うんです。商品は管理栄養士が監修しているので、栄養の基準はクリアしていますが、大きな具材を入れることで見た目にも良いと感じてもらえるのではと思っていて。野菜をしっかり、たくさん摂れることができ、見た目にも楽しめるのは、お客様に対する僕らなりのオリジナリティでもあります。

――リピーターは全体でどれくらい

全体だと3分の2以上ですかね。新規の人も結構継続してくれています。事業自体はほぼサブスクの既存のお客様で売上ができています。

――新規の方を取り込む施策と、リピーターの方を逃さない施策は。

新規のお客様はほとんどダイレクトマーケティングをとっているので、奇抜なことはやってないです。ただ、富永愛さんとのコラボなど、ニュースになりそうなことは意識してやっていたりはします。

あとは、新商品の追加を今は1ヶ月に1回ほどのペースでやっていまが、もう少し増やすために色々と体制を考えたりはしています。

――新しい工場との提携ですか。

レシピ開発の方での取り組みかと思っていて。うちは自社の社内にレシピ開発の体制があって、自社で原材料とかを探してきて僕たちが見つけてきた原材料をOEM先に繋ぐという、結構特殊な製造工程を踏んでいます。

〈原料から調味料まで自ら選定 食べてもらえる機会の創出を〉

――原料を自分たちで?

そうなんですよ。これはユニークだと思います。普通はOEM先の工場とつながっている原料メーカーの製品を使わせてもらい商品を作る、という感じだと思います。僕らの場合、この会社を作った時に誰も飲食業界関係者がいなくて、食のことは全く分からなかったんです。なので、料理を作るなら原料が必要だと思い、ブロッコリーを扱っている企業に電話をかける、みたいなことをやっていました。

これは今でも取り組んでいて、素材だけでなく塩やコンソメなどの調味料も含めた原材料を自分たちで選定して、それを工場につないで作っていただくという形です。後にそんなことをやっている会社はないことを知りましたが、複雑な料理を考案できるほか、原価の流れの影響を自分たちでうまく改善できるなど、今となってはそれが強みになっています。今後は素材選定をより強めると共に、レシピ開発の強化なども進めます。

難しいところで、サブスクの定期便だと、利用される方にとって好きなレシピが決まっていることがあるんです。だから全部のレシピを流動的に変えることは求められていないと思っています。だからといって多く商品を出せば良いわけでもないので、適切な数のレシピを、適切な量で出していくことが大事で、毎月多くの商品を投入する必要はないと思っています。ちゃんとそこのいい塩梅を探しながらレシピ投下数を決めて、それのために必要な陣営を採用していくっていう考え方なので、今よりは強くする必要はあるかなと思っているんですけど、どんどんそこを増やしていって、どんどん商品出しましょうっていう考えではないですね

――今は何品目ほど展開されていますか。

約70SKUです。おかず類だけで40品目ほど、スープが15品目ほどで、残りがスムージーとサラダです。

おかずを出すことのメリットは、利用頻度が大きく増えたことです。スムージーやスープなどは毎日食べる人は少なかったのですが、おかずは毎食必ず食べる方が多くて、僕らが啓蒙しなくても食べていただく頻度は上がりました。

また、おかずを出した23年6月のタイミングで、値下げを実施しました。多くの企業で値上げをしている中、利用頻度を上げるために行ったところ、買い上げ点数が増え、月当たりの一人当たりの単価は上がりました。これが売上を伸ばせた要因の一つでした。もちろん、これを行うために原価改善なども進めてきました。

――反対に足りてない部分は。

楽しい食のセルフケアというか、自分を好きで生き続けられる人生を増やしたいという意味ではグリーンスプーンというのはある種サービスで、グリーンスプーンというサービスをどう使っていただくかというところが僕らとしてはテーマとしてあります。

そういう観点で見ると、既存のお客様とのリレーションをどう築いていくかというところはまだ僕らの改善の余地はあると思っています。お客様の声を聞いてそれを商品に反映することがまだ不足していると思っていて、もっとお客様とのつながりをつくっていきたいです。

――今後の取り組みなどお聞かせください。

自分を好きで生き続けられる人生を増やしたいと思っていて、僕らの考えをちゃんとお客様に伝えていくことも大事だと思っています。なので、芸能人の方や、飲食店さんとのコラボなどで、サービスの利用を続けてもらえたらと思っています。新しい企画なども引き続き仕込んでいます。

食のサブスクは、どれだけ食べる頻度を増やしていただくかが大切だと感じています。どれだけグリーンスプーンが生活に入り込めるか、食べていただく頻度を増やせるかが重要になると思っています。食数を増やしてもらうため、新しい取り組みや新商品などでよりこのサービスを楽しんで欲しいです。

〈冷食日報2024年4月17日付〉

媒体情報

冷食日報

冷凍食品に関するあらゆる情報を網羅した日刊の専門紙

冷食日報

近年の冷凍食品をめぐる情勢は、共働き世帯の増加や家族構成の変化、また飲食店や量販店の惣菜売場の多様化によって需要が増加しています。一方で、家庭用冷凍食品の大幅値引セールの常態化はもとより、原料の安定的調達や商品の安全管理、環境問題への対応など課題は少なくありません。冷食日報ではこうした業界をめぐるメーカー、卸、そして量販店、外食・中食といった冷凍食品ユーザーの毎日の動きを分かりやすくお伝えします。

創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
体裁:
A4判 7~11ページ
主な読者:
冷凍食品メーカー、量販店、卸、外食・中食、輸入商社、物流会社、業界団体など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送 *希望によりFAX配信も行います(実費加算)
購読料:
3ヵ月=本体価格21,384円(税込)6ヵ月=本体価格42,293円(税込)1年=本体価格83,160円(税込)