広がる「タイパ」で冷食が狙う「即食」需要、冷食全体は販売減も一食完結型の商品など好調
冷凍食品において、パスタやラーメン、丼ものメニューに加えて、複数のおかずや主食が一体となったワンプレート商品や冷凍弁当などの、一食完結型の商品が一層支持されている。
「タイパ」ニーズの高まりから、冷凍食品の「簡便性」が改めて支持を集めており、テレワークをしている人や専業主婦が気軽に活用できる商品としても活用されているという。
日本冷凍食品協会が今年4月に発表した、2023年の『冷凍食品の生産・消費統計』によると、冷凍食品の国内生産は、金額(工場出荷額)が前年比2.1%増の7,799億円で過去最高となった。しかし、数量は3.3%減の154万5,568トンだった。家庭用は、値上げによって金額は上回ったものの、物価高による節約志向の高まりなどで買い上げ点数の減少も見られた。ただ、コロナ禍以前で最も数量が多かった19年は上回っている。その中で一食完結型の商品は注目を集めている。
あるメーカーの幹部は「冷凍食品で最近ニーズが高まっているカテゴリーは、節約志向に応えられる弁当商材と、『タイパ』ニーズに対応できるワンプレート商品のような一食完結型のもの」と話す。
元々冷凍食品は即食性の高い商品群として、主婦層のランチとしてパスタなどがよく利用されていた。近年では夜間での活用も広がると共に、テレワーク時の昼食としても利用が広まっている。メニューもラーメンやパスタに加え、ご飯とおかずをセットにした弁当のような商品などの存在感が増している。また、「タイムパフォーマンス(タイパ)」意識の高まりも、販売が広がっている要因となった。
別のメーカーの担当者は「コロナ禍を経て、冷凍食品が便利だということを多くの方に認知してもらえた。その中で、調理の手間がかからず、食事を手軽に終えられる冷凍の商品は、『タイパ』ニーズに対応した商品とも言える」と語る。
メーカー各社で販売している商品はいずれも順調な推移を見せているようだ。ニップンでは、ごはんやパスタと主菜をセットにした『よくばり』シリーズを展開している。プレート商品は同社の中でも好調なカテゴリーで、伸長し続けているという。
ニッスイで展開の『まんぞくプレート』も順調に推移しているようだ。今春には新商品『ふっくらごはんとカツカレー』を投入した。取締役常務執行役員最高財務責任者の山本晋也氏は「今年4月時点の話だが、6つあった商品を、3つに絞り込んで販売せざるを得ないほどだった」と振り返る。
ニチレイは『三ツ星プレート』シリーズを展開している。業務用の食品を展開する中で培った技術を活かしており、23年9月の発売から堅調な推移を見せているようだ。
サブスクリプション型(定期注文)のサービスも広がっている。冷凍弁当を展開する企業の担当者は「手軽に食べられる商品の需要が高まっており、それも追い風となった。コロナの影響が落ち着いた今も着実に伸長し続けている。」と話す。
大丸松坂屋百貨店で展開の冷凍グルメ便『ラクリッチ』は、ランチ需要に応えた新たなセットの販売を開始した。会員から寄せられた昼食で使える商品が欲しいなどの声に応えると共に、「タイパ」意識の強い20~30代へのアプローチを図る。
〈冷食日報2024年5月30日付〉