【令和6年6月の需給展望 豚肉】相場下げ要因少なく700~720円の高値予想、末端需要は不振
〈スソ物中心の動き、消費動向読めず波乱含み〉
5月の豚枝肉相場は、月後半にかけて1日当たりの出荷頭数が6万頭を割るまで落ち込んだことで相場は急騰し、5月4週目の東京市場は早くも上物で700円(税抜き、以下同)を超えた。さらに、5月26日に栃木県で豚熱(CSF)が発生したことが豚価高騰に拍車をかけ、5月最終週には700円台後半、関東3市場でも750円前後まで上昇した。昨年は6月2週目に700円台に上昇したが、ことしは約1週間前倒しで700円相場が到来した。
問題は、これから梅雨入りを控えるなかでこの高豚価がいつまで継続するかだ。末端需要は依然としてスソ物が中心で、ウデ、モモ、ひき材はモノが足りない状況が継続している。これに対してロース、カタロース、バラの中部位は荷動きが弱く、枝高・パーツ安という逆ザヤが深刻となっている。昨年は6月2週目に700円を超えた豚価も、梅雨入りしたタイミングで6月中旬には600円前後まで下落した。末端需要の弱さから、ことしも中旬にかけて下げに転じるとみられるものの、前年と違って出荷頭数が少ないため、下げても小幅にとどまる可能性が高い。非常に読み難い情勢だが、月間平均で700~720円とみられる。
〈供給見通し〉
農水省が5月22日に発表した肉豚出荷予測によると、6月の全国出荷頭数は前年同月比1%減の130.9万頭と見込んでいる。1日当たり6.5万頭の計算になるが、昨年の猛暑による種付け不良や、PRRSなど疾病による流産などで各地の出荷者も生体の在庫が少ないようだ。産地食肉センターでは生体が集まらず、東日本を中心に市場買いが増えているという。問屋筋にしてみれば、産地指定・銘柄指定の関係で既契約分を集めなければならず、今後の出荷・上場次第では末端需要と関係なく相場が上昇する可能性が高い。ことしの梅雨入りは平年よりも遅いと言われるが、多湿による餌の食い込みの低下や、PRRSなど呼吸器系の疾病で実際の出荷はさらに低下する可能性もある。先月は栃木県と岩手県で豚熱(CSF)が相次いで発生したが、いまは野生イノシシの活動が活発化する時期となっており、豚熱の再発のリスクも懸念される。
農畜産業振興機構の豚肉需給予測によると、6月のチルド豚肉の輸入量は同4.3%増の3.2万t、フローズンが同2.5%増の5.2万tと予想している。輸入品も円安、外貨高でコストが上昇しているが、7月にかけて国産からの代替需要が強まることも考えられる。
〈需要見通し〉
異例の高豚価が継続しているなか、問屋筋のパーツの販売は苦戦を強いられている。国産は中部位の荷動きが悪化しており、とくにロースが弱い。その半面、豚小間・切り落としで使うウデ、モモ、ひき材の引合いが強く、在庫もひっ迫している。このため、パーツ相場は、スソ物で900円前後の“お断り価格”まで上昇し、バラとほぼ変わらない価格となっている。ロース、カタロースは何とか4ケタ台の相場を維持しているが、賞味期限の短いものなど3ケタ台の相場も散見される。生活防衛意識の強まりでひき材の需要も強く、大貫正肉も700円台の唱え値をつけている。
気象庁の季節予報によると、6月後半の気温は平年より高い日が多いとされており、梅雨と相まって蒸し暑い日が続くとみられる。「父の日」以外はこれといったイベントもなく、量販店の精肉販売も、生姜焼きや冷しゃぶ、カレー用などの品揃えが中心となりそうだ。
〈価格見通し〉
6月3日の東京市場の枝肉相場は上物で761円となった。前市から13円値下がりしたものの、前年よりも50円強高値にある。今後、相場の若干の中だるみが予想されるものの、月間通して出荷・上場頭数は少ないとみられ、前年よりも下げ幅は小さく、月間平均では700~720円とみられる。大貫物も600円台の高値を維持しそうだ。問屋筋では、中部位の在庫圧迫、採算割れが懸念される半面、消費者の節約志向の強まりなど末端消費の動向も読み難く、波乱含みとなっている。
〈畜産日報2024年6月4日付〉