【令和6年6月の需給展望 鶏肉】他畜種からの需要シフトが加速、ムネの引合い強まる
〈モモは月間平均620円前後、ムネ360円前後で反発か〉
5月の鶏肉需給は、ゴールデンウイーク明け以降、消費者の生活防衛意識の高まりなどを背景に他畜種から鶏肉への需要シフトが加速した。とくに、比較的単価の安いムネや副産物を中心に引合いが強まった。その反面、モモは依然として荷動きが弱かった。ただ、相場は季節なりにジリ下げで推移し、月初には640円台でスタートした相場も、最終週には620円台まで値下がりした。引合いの強かったムネはというと、月間を通して概ね350円台を維持し、日によっては360円近くまで反発する日もみられた。
この結果、5月の月間平均は日経加重平均でモモが630円(前月639円)、ムネが354円(356円)、正肉合計で984円(995円)となった。前月同様、モモが630円台まで値下がりしたことで、正肉合計でも1千円の大台を割った。前年同月比では、モモ144円安、ムネ54円安となった。昨年はモモが3~7月まで700円を超える高値で推移していたこともあり、引続き前年価格を大きく下回っている。
〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめたブロイラー生産・処理動向調査によると、6月の生体処理羽数は前年同月比0.8%減、処理重量が2.5%減とともに減少を見込んでいる。地区別にみると、北海道・東北地区は羽数0.4%減、重量0.7%減、南九州地区で羽数0.9%減、重量3.3%減と予測し、いずれも減少するとしている。6月は生産調整の影響もあり前年を下回る羽数・重量が予想されるなか、気象庁の予報では、同月は全国的に平年よりも気温が高くなることが予想され、暑さによる増体への影響なども懸念されるところ。
一方、農畜産業振興機構の需給予測によると、6月の鶏肉輸入量は8.2%減の5万3,000tと予測している。前年同月の輸入量が多かった反動で前年割れを見込むものの、引続き5万tを上回るボリュームに上るものとみられる。このほどブラジルのリオ・グランデ・ド・スル州で発生した大規模洪水の影響など不透明感はあるが、この先も輸入量自体は安定的に推移するものとみられる。ただ、為替などの影響で価格は徐々に上昇しており、先物についてもコスト高が続く見通しで、さらに値上がりすれば、国産へのシフトが強まる可能性もある。
〈需要見通し〉
前述の通り他畜種からのシフトが進むなかで、「6月に入ってからより一層、鶏肉へのシフトが強まっている」(関東の荷受け筋)との声も聞かれ、6月も鶏肉需要は堅調に推移することが予想される。現状は引続き、ムネ、副産物が荷動きの中心で、とくに副産物関係は供給量が限られているだけに、市中はモノが出にくい状況となっている。一方、モモは相場が下げてきたことで、量販店の特売用に引合いが入りはじめているもよう。昨年はこの時期でも700円を超える高値で推移していたが、ことしは600円台前半まで下げるなかで、さらなる荷動きの活性化に期待がかかる。
〈価格見通し〉
6月1日の相場は日経加重平均でモモ624円、ムネ348円でスタートした。週明け3日は、ムネは前市比6円高の354円と反発した。6月も引続き他畜種がコスト高となるなか、鶏肉に需要がシフトする流れは継続するものとみられる。処理羽数・重量の減少や需要環境を鑑みれば、相場の下げ要因は少ない。そうはいっても、モモは夏場の底値に向けてここから上げることは考えにくく、小幅な下げ、もしくは概ね横ばいと予想される。一方、ムネは引合いの強さを反映し強気で推移するものとみられ、反転に向かう可能性が高い。
これらを勘案し、6月の月間平均は日経加重平均でモモが620円前後(農水省市況640円前後)、ムネが360円前後(370円前後)と予想する。
〈畜産日報2024年6月5日付〉