農水省、みそ・しょうゆの輸出目標2025年に231億円、食品の輸出拡大に向け、しょうゆは100億円に到達
農水省は食品の輸出拡大に向け、2025年までに2兆円、30年までに5兆円という輸出額目標を立て、活動を活発化させている。
みそやしょうゆは輸出重点品目に入っており、輸出目標も設定されている。輸出額目標は2019年実績をベースに設定されており、みそとしょうゆ合わせた目標額は、19年実績115億円に対し25年までに231億円を目指す。
同省の輸出・国際局輸出企画課輸出戦略実行チーム品目団体班の中田善大課長補佐によれば、「みそもしょうゆも新型コロナの影響で、輸出額が一部落ちたが、その後回復し、23年実績ではしょうゆが初めて100億円の大台に乗った。みそも若干減少しているが、50億円をキープしている」と語る。
主なターゲットは米国、EU、中国となっており、それぞれの設定目標額は、米国が50億円、EUが44億円、中国が11億円、その他が58億円となっている。国別に課題や方策も定められており、全体的には日本レストランを中心に、現地のニーズに合わせたラーメン、煮込み料理、炒め物などのレシピの充実・普及を図っている。
中でも、米国では、ミレニアム世代や健康志向者向けの高品質な商品需要の取り込みを拡大・強化するとしている。EUでは、日本食レストランの増加に伴い、しょうゆのローカルメニュー需要の取り込みを推進、また、みそでは日本食に加え、現地ローカルメニューや菓子類への調味料用途の拡大を推進している。中国では、富裕層向けを基本に日本食レストランや現地小売店のほか、子どもを持つ若い世代や女性層などの健康志向者の需要の取り込みを拡大・強化しているという。
「食品輸出拡大戦略のテーマはオールジャパンとして市場拡大に取り組む。ジャパンブランドの確立に向け、みそとしょうゆの事業者全体に共通するPRを展開しており、ホームページやSNS、動画などを立ち上げ、それぞれの販促用の資料作成においてもサポートできる体制を備えている」(中田氏)。
販路開拓においては、「海外の大規模な見本市や展示会に出展をして、来場するバイヤーに対し、商談機会を作り、今後の取引につながるような取り組みをしている。食品輸出促進団体に認定されている、全国味噌工業協同組合連合会や全国醤油工業協同組合連合会では、フランス・ヨーロッパで最大級の食品見本市『SIALParis』での出展を予定している」(同)。
〈加工食品クラスター事業展開、個社では乗り越えられない障壁をサポート〉
オールジャパンとしての取り組みでは、日本の各地域における取り組みも後押ししている。加工食品クラスター(加工食品の輸出促進)事業を展開しており、個社単独では難しい資金面・人的面の課題やノウハウ不足などを克服するため、複数の食品製造事業者が連携して輸出拡大に取り組む体制を整えているという。主な活動事例では、単独での海外展示会への参加はハードルが高いと思われる企業には共同での海外プロモーションを提案し、個々の事業者が小ロットでバラバラに輸出し物流コストが割高になる場合には、共同輸送や商流構築などを提案。また、ブランドの確立に向けた取組や海外規制情報などの共有もサポートしている。
大臣官房新事業・食品産業部食品製造課の吉田倫課長補佐によれば、「クラスター事業では、個社で取り組んでいる所をクラスターとして形成し、現在35団体が登録している。北海道ならではのブランドを知ってもらいたい。海外のターゲットを決めて、現地バイヤーや料理人と連携して、どんなものが受け入れられるのかという調査からサポートして、みそ、しょうゆに限っては、発酵をメインに日本の強みを売り込んでいこうと取り組んでいる。農水省ではクラスター事業を拡大していけば、個社では障壁となっていた、包装容器、添加物、手続き、品質管理などもクラスターを形成することで、障壁を乗り越えていけると考えている」と説明する。
今後の取り組みでは、しょうゆの団体はタイ国内最大級の総合食品見本市「THAIFEX」に出展、みそとしょうゆの両団体は輸出エキスポに出展、また、みそでは台湾で試食会やセミナーに加え、国内の蔵巡りなどを計画している。
〈大豆油糧日報2024年6月20日付〉