【令和6年8月の需給展望 牛肉】猛暑と物価高の影響で末端消費が伸び悩む、相場は上げても小幅な上昇、和牛はマチマチ、交雑しっかり
ことしの牛肉の夏場商戦は、消費者の生活防衛意識の高まりと全国的な猛暑続きで、本来動くはずの焼材が鈍く、逆に単価の安い切り落とし関係がまずまずと異例の展開となっている。
昨年、量販店では猛暑の影響で焼肉商品が売れず苦戦したこともあり、汎用性に富む切り落としの品ぞろえに傾注しているようだ。外食もこの猛暑で焼肉やしゃぶしゃぶ業態は苦戦しているようだ。
8月前半は、市場の盆休みの関係もあり、枝肉の手当てが続いているものの、すでに先週の段階で盆休み期間向けの手当ては終えている。このため、今後は相場の大きな上げがないまま、盆休みを迎えると予想される。盆休み明け以降は消費も落ちるため、多少の補充買いがあっても、全般的には在庫消化の動きが強まるとみられ、相場も軟調気味の展開となりそう。
〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、8月の成牛出荷頭数は8万4,800頭で前年同月比1.2%減としている。このうち和牛は3万7,300頭・1.2%減、交雑種が2万1,600頭・6.9%増、乳用種が2万4,800頭・7.1%減となっている。和牛は前年をやや下回るものの、現在の実需を鑑みると出荷調整が必要な状況ともいえる。輸入品は、機構の需給予測によると、チルドが1万6,800t(2.9%減)、フローズンが2万8,300t(0.1%減)と、外貨高と円安の影響で供給量は絞られてくる見込みだ。
〈需要見通し〉
牛肉の末端消費は冷え込んでいるが、ここ1カ月は猛暑が消費の足を引っ張っている。量販店では本来スタミナ食材である焼肉やステーキ関連の商品が動かず、売れるのは単価の安い切り落としやカレー・シチュー用などの煮込み系という。輸入牛肉はコスト上昇で販促を減らしており、その代替となるホルスの供給も少ないため、結果的に冷しゃぶなど国産豚肉でフェースを補っているところが多い。盆休み期間中は帰省や旅行で地方需要が見込まれるものの、精肉は猛暑の影響で期待は薄く、売れるのはローストビーフなど総菜関係が中心となりそうだ。
8月2週目は盆休み期間に向けたカット作業のピークとなっており、枝肉の手当ては盆休み明けを意識した動きとなっている。パーツで動いているのは、ウデ、モモなど切り落とし関係が中心で、ロース、バラは価格対応など「何とか動かしている」(関西の卸筋)状況だ。カタロースは一部焼肉スペックや年末向けの凍結仕込みで動きがみられるが、決して強くはない。
畜種では、和牛の銘柄や雌の上物など指定関係は強いものの、一般的なものは品質や歩留まりで温度差があり、「購買者が欲しいものとそうでないもので相場の付き方がハッキリしている」(関東の市場関係者)。また、交雑種は2等級を中心に引合いが強いが、出回りが少ないため、小じっかりしている。
気象庁は、向こう1カ月は全国的に高温となり、8月前半は広い範囲で最高気温が35℃以上の猛暑日が多くなるなど、引続き厳しい暑さになると注意を促している。牛肉としては、前年以上に厳しい夏となりそうで、さらに盆休み明け以降は実需も一服するため、荷動きは鈍化し、在庫の荷余り感が強まるとみられる。
〈価格見通し〉
すでに盆休み需要に向けた枝肉の手当てが済んでいるため、2週目後半からは軟調になるとみられる。盆休み明けの3週目後半に少しの手当てが入ったとしても、相場の上げ要因とならず、和牛は軟調、交雑種はもちあいがらみの展開となりそうだ。このため、8月の月間平均相場は和去A5で2,350円前後、同A4で2,000円前後、A3で1,800円前後と予想する。交雑種は去勢B3で1,500円前後、B2が1,300円前後、乳用種去勢B2で1,000円前後と予想する。
〈畜産日報2024年8月6日付〉