〈令和6年8月の需給展望 鶏肉〉引続き荷動きの中心はムネ・副産物、猛暑で一部産地では重量低下
〈モモ底値で600円前後か、日によって600円割り込む展開も〉
7月は全国的に厳しい暑さが続き、とくに夏場に向けて需要が高まるムネへの引合いが強まった。また、相次ぐ食品の値上げや牛肉・豚肉の価格が上昇するなか、消費者の生活防衛意識の高まりによって、食肉のなかでも比較的単価の安い鶏肉は堅調な荷動きとなった。
さらに、鶏肉のなかでも単価の安い手羽先やササミといった副産物への引合いも月間を通して強かった。その半面、モモは需要が落ち着く時期であり、静かな商いが続いている。相場の推移をみると、モモは需要環境を反映して弱もちあいの展開に。ムネは引合いの強さから、日経加重平均で360円台を付ける日がみられたものの、月間を通して概ね350円台での推移となった。
当初、業界内では、ムネは反転する可能性が高いとみられていたが、「末端の引合い自体は強いが、相場は想定より上がっておらず、実需とかい離している」(関東の荷受け筋)との声も聞かれる。この結果、7月の月間平均は日経加重平均でモモが613円(前月618円)と前月から5円下げ、ムネは355円(354円)とほぼ横ばいとなった。正肉合計は968円(972円)。前年同月比ではモモが94円安、ムネが42円安で、モモは昨年、7月に入っても700円台と高値を維持していたこともあり、前年価格を大きく下回っている。
〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラー生産・処理動向調査によると、8月の生体処理羽数は前年同月比0.4%増、処理重量が1.5%増とともに前年を上回ると予測している。その一方で、9月は羽数1.8%減、重量0.2%減と減少に転じる見通しだ。地区別にみると、8月の北海道・東北地区は羽数2.4%減、重量0.3%減と予測する半面、南九州地区は羽数0.7%増、重量0.5%増としている。ただ、ここ最近の猛暑続きで九州など産地では増体不良が散見されており、実際の出荷は予測を下回ってくる可能性もある。
一方、農畜産業振興機構の需給予測によると、8月の鶏肉輸入量は前年同月比15.7%減の4万7,200tと予測している。現地価格が高止まりしていることから、各社調達を絞っているようで、5万tを割るボリュームにとどまるとみられる。
〈需要見通し〉
8月も猛暑続きとなることが予想されるなか、鶏肉の荷動きは引続きムネや副産物中心となることが予想される。ただし、副産物関係は供給量が限られていることもあり市中タイトで、手羽先などほぼモノが出回らないという状況。課題となるモモは、基本的には落ち着いた荷動きが続くとみられるが、盆休み前の手当てから一部では若干動きが出始めているもよう。凍結品については、例年モモは相場が下がるこの時期に、年末に向けて在庫を確保する動きがみられるが、ことしは各社生鮮で売り切る向きが多く、在庫はあまり抱えていないものとみられる。
輸入品は盆休みを控え、外食や中食向けの荷動きは堅調にある。ただ相場高を受け、輸入品を扱う量販店向けの荷動きは芳しくなく、国産にシフトする動きもみられるようだ。
〈価格見通し〉
1日の相場は日経加重平均でモモ612円、ムネ357円でスタートしたが、週明け5日はモモ603円、ムネ360円となった。モモは8月が底値となる見込みで、月間を通して600円を割る日も出てきそうだ。ムネは前述の通り、実需を反映すれば月間平均で360円に乗せてもおかしくはないが、加工原料向けが多く、ある程度決まった価格で取引されているという面から上げ幅は小さいと見る向きも。
これらを勘案すると、8月の月間平均は日経加重平均でモモが600円前後(農水省市況620円前後)、ムネは概ねもちあいの355~360円(370~375円)と予想する。
〈畜産日報2024年8月7日付〉