メディカル給食の資質向上を目指す「治療食等献立・調理技術コンテスト」が大阪で開催
8月、フランス・パリのオリンピックや阪神甲子園球場の高校野球と同時期に開催され、盛り上がったのがメディカル給食の祭典、「治療食等献立・調理技術コンテスト」だ。全国の病院・介護施設の食事提供を担う会社の代表16チームが部門ごとに献立を立て、調理・プレゼンテーションを行い、技を競い合った。
主催者である日本メディカル給食協会は8月9日、「第15回治療食等献立・調理技術コンテスト」の2次審査を大阪夕陽丘学園短期大学(大阪市)で開催した。コンテストを通じて、高度な調理技術の開発と食の資質の向上を行い、入院・入所者により良い治療食・介護食を提供することで国民医療・高齢者福祉の向上に寄与することが狙い。後援は、厚生労働省、全日本病院協会、日本医師会、日本病院会、日本医療法人協会、日本病院調理師協会、医療関連サービス振興会の7団体。
今回の治療食部門のテーマは、「軽度肥満を伴う妊娠高血圧症」。厚生労働大臣賞の栄冠には富士産業が輝いた。朝・昼・夕3食のメニューで、胎児の生育に必要なエネルギー・たんぱく質を十分に摂取でき、かつ妊娠高血圧症の改善のための継続可能な食事となるよう工夫をこらした。
写真は夕食メニューで、食べた満足感があり、より良い睡眠がとれるよう考えたという。
主食「つぶつぶコーンピラフ」は、ピラフにコーンを入れることで、食感を楽しみ、咀嚼効果で満足感を演出。
主菜「チキンのロティソース小松菜ジェノベーゼ風~グリル野菜を添えて~」では、鶏肉にマスタードを使用し香辛料で食欲を刺激することで減塩につなげた。また、緑黄色野菜をグリルし、野菜が持つ甘みと旨みを引き出した。
汁物「ごろっと野菜のミネストローネ」では、トマトのリコピンに抗酸化作用があり、セロリのアピイン、セネリンが精神を落ち着かせる効果があるという。
デザート「花咲く紅茶ゼリー」は、甘みを抑えた少し大人の紅茶ゼリー。果物の甘みでさっぱりとした味わい。
献立を作成した管理栄養士の高花栞鈴(かりん)さんは「女性らしい華やかさや色彩を意識して献立を作った。おうちでも簡単にできるよう工夫した」とコメントした。
チームは多忙な仕事の合間を縫って、10回以上練習を行い、盛付も改善に改善を重ねたという。管理栄養士の郡司眉佳さんは「献立も、調理も、素敵なものになるよう頑張ってきたけれど、チームワークが一番大事だ。皆の力でここまでこれた」と振り返り、「頑張ってきた力を全部発揮した。今まで支えてくれた皆さん、ありがとうございました」と感謝の言葉を綴った。
なお、厚生労働省医政局長賞は、治療食部門でイフスコヘルスケア、一般食部門でトーカイフーズ、行事食部門でグリーンハウスがそれぞれ受賞した。一般食部門のテーマは「長期入院している小児が家族で一緒に楽しむ記念日の食事」。行事食部門のテーマは「有料老人ホームで大阪・関西万博を楽しむお弁当」。
審査員を務めた厚生労働省 医政局地域医療計画課 医療関連サービス室の武田豊室長は「すごく技術が高く、甲乙がつけがたく審査員泣かせの内容だった」と述べ「患者給食の取り巻く状況は急速に変化している。これからも患者さんの治癒や病状の改善等質の向上に尽力してほしい。人材不足や物価高騰もあり、日頃から苦労されていると思うが、引き続き医療の向上に努力をお願いしたい」と期待をかけた。
協会の平井英司会長(日総代表取締役)は「皆さんの調理は本当に美しかった。絵になるものだった。今回感じた学びや難しさを各事業所に持ち帰り、また成長してもらえたらうれしい」と述べた。
協会は設立35周年を迎える。2024年5月時点で、正会員数228社、賛助会員62社。給食受託件数は病院及び診療所4,604ヶ所、特別養護老人ホーム等の老人介護施設7,832ヶ所、その他の福祉施設2,039ヶ所で合計14,475ヶ所。病床数は合計約139万5,000床で、2019年と比べて11万床ほど伸長している。