【次世代経営者に聞く】築野グループ・築野靖子取締役経営企画部部長、米糠を活用し副産物を高度に有効活用、新卒採用に注力、大学レベルの研究環境

築野グループの築野靖子取締役経営企画部部長(C)村田克己
築野グループの築野靖子取締役経営企画部部長(C)村田克己

家庭用こめ油は右肩上がりに市場拡大し、23年度に170億円を突破した。代表的なこめ油専業メーカー築野食品工業も大容量1,500gのシェアが伸びているという。同社を含む築野グループの築野靖子取締役経営企画部部長は、「こめ油を使い始める方は、健康面や機能面が入口になることが多いが、リピートいただけるのはおいしさ、料理での使い心地の良さが理由だと思う」とその魅力を語る。

「さまざまなニーズに応える幅広いラインアップを目指している」と強調するように、「こめ油」に加え、自然派志向の人には「圧搾一番搾り国産こめ油」を提案し、紙パック容器や有効成分を多く残した「逸品こめ油」もそろえる。機能性表示食品「体にうれしいこめ油」も発売した。

築野グループでは、こめ油製造、機能性成分を利用したファインケミカル、脂肪酸を工業用途に用いるオレオケミカルの3つの事業を展開している。

「創業の精神に食料の安定供給で社会に貢献するという思想がある。米糠を食として活用し、すべての副産物を高度に有効活用するというのが当社の根幹にある」と語る。

同社が最近注力しているのは、若手社員の活躍に対するさまざまな仕組みづくりで、特に新卒採用に力を入れている。若い人が自分の興味を発揮できる大学レベルの研究環境も同社の強みだという。

「研究者がワクワクする環境が会社の力になるというのが社長と副社長の考えで、研究のプレゼンスが大きく、制度にも表れている」と強調する。社会人として働きながら博士号を取得できる制度も設けている。

〈素早く強く連携し続けられる組織に、米糠の有効利用が生み出す価値を伝える〉

築野取締役は人材業界を経て同社に入社後、築野富美社長が手を付けたいと考えていたことを中心に広報やPRを担当した。組織づくりにも取り組み、それまでなかった人事制度を設けた。会社の方針と組織の方針を紐づけるように整備した上で評価制度も導入した。

「当社の強みは、新しいことにチャレンジし続ける風土と変化に対する柔軟な対応力、お客様起点で素早く動き皆で連携することだ。組織が大きくなりつつある今、トップはもちろん、一人ひとりの社員が意志を強く持ち、素早く強く連携し続けられる組織にしたい」。

この10年で社員は約100人増えたという。「社会的価値のある米糠の高度有効利用に取り組んでいる。そういう視点での自負がある組織にする」と語る。

中長期的なビジョンについて、「築野グループは、米糠の可能性の探求をブレずに行っていく。こめ油の安定供給に向けた開発、米糠成分の新たな機能性の発掘、さらに、非可食部の工業用途利用拡大を目指す」。

米糠を有効利用する価値を伝えるストーリーも大事にしていきたいという。

「米糠の機能的な価値の訴求は今までも行っているが、日本で発生する貴重な資源に価値を見出すことであり、人々の健康や美容はもちろん、食料の安定供給やバイオマス度向上、脱炭素社会などへの貢献という面でも価値があることを言語化して伝えていきたい」とする。

【築野靖子 取締役経営企画部部長 プロフィール】

つの・やすこ。1983年生まれ、和歌山県伊都郡かつらぎ町出身。京都大学大学院農学研究科修了。2008年リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。主に製造業における中途採用に関する法人営業を担当。2016年築野食品工業入社。人材開発プロジェクトチームにて採用や人事制度、評価制度、研修制度の構築と運用を担当。また、経営企画部にて広報・PR・新商品開発などを担当している。

〈大豆油糧日報2024年8月29日付〉

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