【冷食特集まとめ】冷凍食品は「簡便性」がより重要に、市販用は「タイパ」「コスパ」などで需要増

付加価値提案や値ごろ感、簡便性への支持はより高まっている(画像はイメージ)
付加価値提案や値ごろ感、簡便性への支持はより高まっている(画像はイメージ)

冷凍食品市場において、市販用・業務用ともに「簡便性」をより打ち出した商品の支持が高まりつつある。市販用は共働き世帯や単身世帯の増加などで料理をする手間を減らしたいというニーズが高まり、ワンプレート商品などが支持を集めている。業務用は、飲食店やレジャー施設、宿泊施設などで人手不足は慢性化しており、少しでも手間を減らすべく加工度の高い商品の採用が増えつつあるようだ。メーカー各社でも簡便性をより打ち出した提案を強めつつある。

2023年の冷凍食品市場は各社の相次ぐ値上げ発表により、売上は前年を上回るも数量は大きく落ち込むメーカーも見られた。2024年においては、売上・数量ともに前年を上回る傾向にあったという。小売大手への取材でも、数量は前年並みか、上回る水準にあり、メーカー各社の価格改定もあって売上は伸長していた。

市販用冷凍食品については、値ごろ感を打ち出したものと高付加価値商品の二極に分かれる傾向がより進んだ。値ごろ感へのアプローチとして、店舗によっては同じ商品をまとめて売る「バンドル販売」で、他の商品の販売につなげるよう取り組んだ。ちょっと贅沢をしたい、というニーズに対しては、スイーツや冷凍機内食、飲食店監修メニューといった商品の提案は一定の支持を得たという。

小売店の担当者は「カテゴリーによって好不調が分かれたものの、おおむね堅調に推移した。その中で冷凍野菜は、生鮮野菜の価格高騰によって支持を広げたほか、価格の低い弁当商材や、簡便性の高いワンプレート商品などの好調が目立った」と振り返る。他の小売店も似た傾向にあった。

中でも、ワンプレート商品は大幅な売上増が続いている。ピーク時には店舗によって前年同月の倍以上の売上を記録したところもあるなど、好調を維持している。共働き世帯や単身世帯の増加で、調理の負担を減らしながらちゃんとした食事を摂りたいというニーズの高まりから、販売は伸長し続けている。新商品の投入も進み、小売店では売場の拡大が進みつつある。

業務用冷凍食品においても、「簡便性」へのニーズはより強まっている。飲食業界を筆頭に様々な業態で人手不足は深刻化している。光熱費などの高騰も追い打ちをかけるような状況で、調理場では、これまで以上に手間をかけずに料理を提供できるような製品の支持は高まっている。そのため、自然解凍に対応した揚げ物や、解凍するだけで1品が出来上がる製品、レンジ対応の商品など、素材と比べると価格は高いが、手間を大幅に減らせる製品への支持はより強まっている。

メーカーの担当者は「全体からすると外食の業態の回復に加え、量販店の惣菜が堅調に推移しているほか、人流の回復でコンビニや給食業態も伸長している」と話す。その一方、飲食店ではバイトを募集しても人は集まらず、ランチタイムなどに店を閉めざるを得ない時もある。ホテルの場合は朝食ビュッフェで提供しなくてはならない品目が多いため、少しでも負担を減らすべく加工度の高い商品の採用は進んでいるという。そのため、「人手不足の現場に役立つ商品を求める声が最も多かった」と振り返る。

今後の動向で、市販用市場においては、高単価な商品と安価な商品を求める傾向は今後も継続するとの見方が強い。新興メーカーの参入も増えつつあり、競争はより激しくなるという。大手メーカーでも、値ごろ感と付加価値提案の二極に分かれた商品提案が見られる。小売店では、プライベートブランド商品などを通じて独自の価値提案も進める。

業務用市場では、人手不足は今後も継続する見通しから、現場の負担軽減につながる商材の提案はより進むと見られる。今秋から発売される新商品でも、簡便調理で本格的なメニューを作れるような商品が多く出ており、動向が期待される。

〈冷食日報2024年9月17日付〉

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近年の冷凍食品をめぐる情勢は、共働き世帯の増加や家族構成の変化、また飲食店や量販店の惣菜売場の多様化によって需要が増加しています。一方で、家庭用冷凍食品の大幅値引セールの常態化はもとより、原料の安定的調達や商品の安全管理、環境問題への対応など課題は少なくありません。冷食日報ではこうした業界をめぐるメーカー、卸、そして量販店、外食・中食といった冷凍食品ユーザーの毎日の動きを分かりやすくお伝えします。

創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
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