【みその市場動向】業務用の販売が好調、輸出面の強化が求められる
みその国内消費量の減少が止まらない。少子高齢化に加え、和食以外の食事回数が増えているため、みそ汁やみそを使った料理が卓上に出現する回数が減っている。しかし、インバウンドによる外食が好調なことから、みその業務用の販売は好調に推移していると聞く。和食に興味のある外国人は日本の調味料にも関心が高いことから、お土産として購入するケースも多いという。業界だけでなく、国もみその輸出に意欲的で、補助金を出して海外の展示会への出展を促している。今後は輸出面での強化がさらに求められてくるだろう。
全国味噌協同組合連合会がまとめた24年1月~7月のみその出荷量、生産量はともに前年を下回って推移した。出荷量が前年比2.6%減の19万9,003t、生産量が3.4%減の20万2,273tとなった。
総務省統計局がまとめた1~7月の家計調査によると、支出金額は1月を除いた、全ての月で前年を上回った。購入数量は2月を除いた全ての月で前年を下回った。反対に、平均価格は2月を除いた全ての月で前年を上回り、上昇傾向にある。値上げの影響が出ていることが伺える。
円安による原料価格や包装資材費、物流費の高騰など、生産コストが高止まりしている。加えて、今年は米が市場から消えるといった令和の米騒動もあり、みその原料米も高騰したことから、みそメーカーは値上げに踏み切らざるを得ない状況に迫られた。
それでも、値上げに踏み切らないメーカーもいた。売場の棚を確保するためだ。値上げにより、売場から外されてしまう不安が、値上げを踏み止まらせている。そのため、売上は増収、販売数量も増加しているものの、利益が取れない状況が続くところも存在する。メーカーの中には「円安が収まれば、必ず挽回できる時期がくる」と信じて、辛抱強く耐えるメーカーもある。
〈大手メーカーで多角的な事業展開進む、中堅メーカーは変化の時〉
大手みそメーカーは、みその売上、販売数量も前年を上回っている。毎年、年に2回、新商品を開発できるマンパワーがあるからだ。付加価値の高い商品を投入することができるので、消費者の興味を引きやすく、それほど安価に設定しなくても、販売が見込める。
ひかり味噌の「CRAFT MISO 生糀 650g」は、「フルーティー」「そのまま食べられるみそ」などといったこれまでにない切り口で販促を仕掛け、成功している。秋冬の新商品発表会で林善博社長も「30年のみそ人生の中で一番売れた商品」と絶賛していた。秋の新製品では改めて、新しい有機みそを2種類発売した。SDGsとの関わりを持たせた商品として投入し、持続可能性のある商品だというイメージを打ち出している。
ひかり味噌は、他業種との販促活動も積極的だ。濱田酒造とコラボし、お互いのファンを集めて、ミーティングを行った。酒類に合うみそ料理などのレシピ提案をはじめとしたさまざまなアイデアが披露されたことで、両社のみならず、集まったファンも一緒に両社の商品を応援していこうというモチベーションが生み出されたのではないだろうか。
トップメーカーのマルコメは、みそ汁の具材として世界初となるあおさの陸上養殖試験設備を愛媛県に開設、24年9月から出荷している。人気具材の確保だけでなく、持続可能性やCO2削減にも期待できる事業として、みそ業界でも話題となった。
また、同社はかねさなどさまざまな企業と組んで事業を展開しており、グループ会社を意欲的に受け入れている。周りを取り込んでいくことで、販促の仕方も広がり、大きな利益をもたらす可能性が高まっている。事業展開もみそだけに止まらず、糀や大豆をみそに並ぶコア事業として位置づけ、多角的な事業展開を今後も進めていくだろう。
中堅みそメーカーにおいても、異業種からの助っ人を受け入れて、営業の仕方、事業の展開の仕方を変えていこうという動きが見られる。みそ一筋ではなく、みそから派生するビジネスやイベントを実行することで、これまでにはない収益を獲得できる可能性がある。中堅みそメーカーは今、変化の時を迎えており、消費者のニーズに対して、アウトプットできる商品やサービスを生み出していく時期にきていると言えるだろう。
〈大豆油糧日報2024年10月11日付〉