セブン&アイHD、スーパー事業等を中間持株会社「ヨークHD」へグループ構造再編、セブンイレブンに専念し、社名も「セブン-イレブン・コーポレーション」に
セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、グループ構造の最適化を図るためイトーヨーカ堂などスーパーストア(SST)事業のIPO(新規株式上場)を目指す中、SST事業グループを統括する中間持株会社「ヨーク・ホールディングスを設立、戦略パートナーを迎え、2025年度中をめどに持分法適用会社化する。また、国内・海外のCVS事業に専念する「7‐Eleven Corporation(セブン-イレブン・コーポレーション)」に社名を変更する。10日にオンライン開催された決算説明会で井坂隆一社長が明らかにした。
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井坂社長は、経営方針の主要な戦略としてグループ構造の最適化、事業運営の改善と成長の加速、株主価値の還元の3つを掲げる。
〈CVS事業とSST事業の製品開発シナジーは維持、PB「セブンプレミアム」継続〉
うちグループ構造の最適化について「CVS事業、SST事業、金融事業の各事業における潜在的な価値を最大限に発揮するためには、グループ構造の最適化を、スピード感をもって着実に実行していく必要がある」とし、SST事業を束ねる中間持株会社「ヨーク・ホールディングス」を設立。戦略パートナーを招聘して2025年度中に持分法適用会社化を進め、自律的な財務規律のもとで成長戦略強化を目指すという。
一方で同社も半数以下の持分を維持し、CVS事業とSST事業グループの製品開発におけるシナジーを引き続き発揮していく方針で、PB「セブンプレミアム」も継続する。
ヨークHDの傘下にはスーパーの▽イトーヨーカ堂(ヨークHDの持分100%)▽ヨークベニマル(同100%)▽シェルガーデン(同90%)――だけでなく、専門店の▽ロフト(同75%)▽赤ちゃん本舗(同95%)――、外食の▽セブン&アイ・フードシステムズ(同100%)、「アリオ」等商業施設開発の▽セブン&アイ・クリエイトリンク(同100%)――など、子会社24社・持分法適用関連会社7社の計31社と幅広い業態が入ることになる。
これに加え、セブン銀行を中心とする金融事業についても最適な資本関係を検討するという。これらにより創出されたキャッシュフローをCVS事業における成長投資や株主還元に充当する方針だという。
井坂社長は「セブン&アイHDができたのが2005年で、当時の社会・経済環境と現在は随分変わってきた。セブンイレブンのビジネスはグローバルに成長しており、SST事業とCVS事業では成長ストーリーが随分変わってきた。同じ屋根の下で片方は成長が早くエリアも広がり投資額が多く求められる一方で、SST事業の成長領域は国内ドメスティックに集中し、扱い品目も違うが、同じ屋根の下で資本の振り分けをするとなかなか成長投資をしづらい状況が続いてきた。同じ成長ストーリーを持つ会社を集め、その成長ストーリーを独自に自分たちで考えて自律して成長していくんだという思いで経営をしてもらうことが非常に大事だと考え、議論を重ねて今回の結論に至った」など話した。
〈CVSが残るセブン&アイは社名変更とIFAS適用でグローバル成長目指す〉
一方、これら再編後のセブン&アイ・ホールディングスには国内CVS事業のセブン‐イレブン・ジャパン(SEJ)、北米CVSの7-Eleven Inc.(SEI)、北米以外の海外CVSの7-Eleven International(7IN)と国内・海外のCVS事業が残り、同事業にフォーカスしていくことになる。それを明確化するため、来年5月の株主総会の決議を経て「7‐Eleven Corporation(セブン-イレブン・コーポレーション)」に社名を変更。
さらに会計基準でIFAS適用準備を進め最速2028年に適用する。同社の業績は、現在の基準(JGAAP)よりIFASの方が、各種指標が高く出る傾向がある。これにより、世界トップクラスのグローバルな流通プレイヤーとしての評価を獲得するとともに、競合他社との立ち位置を見える化し、グローバルでのさらなる成長を目指すという。
同社をめぐっては、北米CVS2位のアリマンタシォン・クシュタール社(カナダ)から買収提案を受けており、一連の施策で株価を上げ、対抗していこうという意図もあるようだ。